不動産を扱っていると、意外と多くの方が戸惑うのが「滅失登記(めっしつとうき)」です。今回は、私のお客様で最近この滅失登記が必要になる方がいたので書いてみます。
「実家を解体したけど、その後の手続きはどうすればいいの?」
「土地の売却を考えたら、昔の家が登記簿に残ったままだった…」
こんな声をよく耳にします。そこで今回は、ご自身でできる滅失登記の申請方法や必要書類、注意点をまとめてご紹介します。専門家に頼まなくても対応できるケースは多いので、ぜひ参考にしてください。
1. 滅失登記とは?
滅失登記とは、建物を解体して存在しなくなったことを法務局の登記簿に反映させる手続きです。
不動産登記簿には、建物の構造や面積などが記録されています。建物が解体されても登記上残ったままだと、実際の状況と食い違ってしまいます。そのため「建物がなくなった」という事実を登記で整理する必要があるのです。
1-1. 申請期限と罰則
建物の所有者(または登記名義人)は、建物を取り壊した日から1カ月以内に滅失登記を申請する義務があります。
怠ると10万円以下の過料に処される可能性もあるため、早めの対応が望ましいです。
1-2. 申請できる人
- 建物の所有者本人
- 共有の場合 → 共有者のうち誰か一人
- 所有者が亡くなっている場合 → 相続人の一人
といったように、手続きを進められる範囲は意外と広いです。
1-3. 登記を放置するリスク
滅失登記をしないと次のようなデメリットがあります。
- 固定資産税を払い続けることになる
- 土地の売却や再建築の妨げになる
- 最悪の場合、過料を科される
「もう建物はないのに、なぜか税金がかかり続けている」なんて事態も珍しくありません。
2. 自分で申請する際に必要な書類
基本的に必要なもの
- 建物滅失登記申請書
法務局のHPからダウンロードできます。建物の所在地・構造・床面積などを記入します。 - 建物滅失証明書(取り壊し証明書)
解体業者が「確かに取り壊しました」と証明してくれる書類です。解体工事を依頼した業者にお願いすれば発行してくれます。 - ※解体業者の資格証明書
法人であれば登記事項証明書や会社法人番号、個人であれば印鑑証明書など。
※管轄法務局によっては、2の解体業者の会社法人等番号が分かり申請書にその番号を記載できれば省略できます。 - 案内図(こちらは必須ではないですが、法務局の方にとってはより分かりやすくなるため、あると喜ばれます)
本人以外が申請する場合は委任状が必要となります。
※登記簿記載の住所が、現住所と違う場合は住民票が必要となります
法務局HP:https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html#23
以下、記入例


状況によって追加で必要なもの
- 住所や氏名が登記と異なる → 住民票や戸籍謄本
- 所有者が死亡している → 相続関係を証明する戸籍謄本類
- 本人が手続きできない → 委任状
3. 取り壊し証明書がない場合の対応
昔に取り壊した建物だと、業者が分からないケースもあります。
この場合は、「上申書」を提出して対応します。
上申書には以下を記載します。
- 建物の特定情報(所在・構造など)
- すでに存在しない旨
- 解体年月日のわかる範囲
そして実印の押印+印鑑証明書を添付することで、法務局に認めてもらえる場合があります。
4. 滅失登記の申請の流れ
- 必要書類を準備する
- 建物所在地を管轄する法務局へ申請
- 1週間〜10日程度で登記が完了
- 「登記完了証」を受け取る
流れ自体はシンプルです。書類さえそろえば、手続き自体はそれほど難しくありません。
5. 自分でやる? 専門家に頼む?
- 書類の準備ができる → 自分で申請可能
- 相続が絡んでいる → 土地家屋調査士や司法書士へ相談が安心
費用の目安は、土地家屋調査士に依頼する場合で3〜5万円程度。
「急ぎで土地を売りたい」「相続関係が複雑」などの場合は、プロに依頼する価値があります。
6. よくある質問
Q. 自分の土地に他人名義の建物が残っている場合は?
A. 原則として、所有者以外は滅失登記できません。法務局に申し出て、登記官の職権で整理してもらうケースになります。
Q. 相続登記をしなくても滅失登記できる?
A. 相続登記前でも、相続人の1人が申請可能です。ただし解体には相続人全員の同意が必要なので注意しましょう。
まとめ
- 建物を解体したら1カ月以内に滅失登記が必要
- 放置すると税金や売却に影響する
- 書類がそろえば自分で申請可能
- 書類が不足している場合は「上申書」で対応できることもある
- 相続や売却を急ぐ場合は土地家屋調査士に依頼するのがおすすめ
不動産の売却や相続をスムーズに進めるためにも、滅失登記は避けて通れない大切な手続きです。ご自身で申請できる部分は挑戦しつつ、不安があれば専門家を頼る、というスタンスが一番安心ですね。