不動産会社のサラリーマンを19年経験し、42歳の時に地元である千葉県市原市でUターン起業した私、大橋登の経験をもとに解説します。以前の記事を公開してから時間が経ち、電子定款や公証人手数料の改定など制度面でいくつか変化がありましたので、今回、最新の情報に合わせてリライトしました。
設立に関する書類はコピペしてそのまま使えるようテキストにしてありますので、ご自由にお使いください。 ※ご利用にあたって何らかの損害が生じても、当社は一切の責任を負いかねます。自己責任でお願いいたします。
不動産会社を作るまでの3ステップ
- 法人設立
- 許認可取得(宅地建物取引業免許)
- 営業保証金等の支払い
今回はこのうち「1 法人設立」について、具体的な手順とあわせて解説します。
まずは司法書士に頼むか、自分でやるかを決める
法人設立の専門家である司法書士の先生に依頼すれば、とてもスムーズに設立が可能です。相場としては報酬5万〜15万円程度に加え、公証人手数料などの法定費用がかかりますが、何より「時間を買える」のが最大のメリットです。プロに任せれば、約1週間程度で設立できます。
一方、私のように開業時の初期コストを極力抑えたい方や、時間に余裕のある方は、自分で法人設立の手続きを行うことも十分可能です。以下、私が実際に行ったスケジュール感をベースに、現在の制度に合わせて手順を紹介します。
電子定款を使うかどうかで費用が大きく変わる
以前の記事執筆時点では紙の定款が前提でしたが、現在は自分で電子定款(PDFに電子署名を付与した定款)を作成する方も増えています。ここが最初の分かれ道になるので、先に整理しておきます。
- 紙の定款:印刷・製本した定款に、印紙税として4万円分の収入印紙を貼付する必要があります。
- 電子定款:PDFなど電子データで作成するため、印紙税法上の課税文書に該当せず、収入印紙代4万円が不要になります。ただし自分で電子署名を行うには、マイナンバーカード、ICカードリーダライタ、電子署名対応のPDF作成ソフト(Adobe Acrobat Proなど)といった環境が必要になり、これらを一から揃えると数万円のコストがかかることもあります。
「今回限りで機材投資はしたくない」という方は紙の定款、「今後も電子契約などで使う予定がある」という方は電子定款、という基準で判断するとよいでしょう。なお、電子定款の作成・認証だけを司法書士や行政書士に代行してもらうことも可能で、その場合も印紙代4万円は節約できます。
また、電子定款を利用する場合は、定款認証と設立登記のオンライン申請を法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を通じて一括で進められる仕組みも整っています。
公証人手数料も条件によって引き下げられている
定款認証にかかる公証人手数料についても制度改正がありました。
- 2022年1月の改正で、資本金100万円未満の株式会社は手数料が3万円に引き下げられています(従来は資本金額にかかわらず一律5万円)。
- さらに2024年12月からは、発起人が3人以内の自然人のみで、取締役会を設置しない株式会社であれば、手数料が1万5,000円まで引き下げられる制度が始まっています。
自分がどの区分に該当するかは、事前に管轄の公証役場に確認しておくと安心です。
私が実際に行った設立スケジュール
以下は私が実際に法人を設立した際のスケジュールです(紙の定款で進めた当時の例をベースに、現在の実務に合わせて補足しています)。
9月15日 商号・目的・所在地・取締役・資本金・事業年度の決定
9月16日 各種会社印の作成(代表印、銀行印、社印、ゴム印)
9月17日 発起人決定書の作成
実際に私が作成した発起人決定書が以下です(一部加工しています)。
発起人決定書
令和〇〇年〇〇月〇〇日午後〇〇時〇〇分、【住所記入】において発起人全員が出席し、
その全員一致の決議により下記の事項を決定した。
記
一、商号は、株式会社〇〇〇〇とすること。
二、本店は、〇〇県〇〇市に置くこと。
三、目的は、次のとおりとすること。
1. 不動産の賃貸、管理、売買及びその仲介
2. 不動産に関するコンサルティング業務及びマーケティングリサーチ
3. アセット・マネジメント(個人金融資産の効率的運用)業務
4. 建築物及び室内空間のデザイン企画、制作並びにコンサルティング業務
5. 建物の調査、診断、改修、増改築工事に関する企画、設計、施工、請負及びコンサルティング業務
6. 建築資材、家具、家庭用電気製品、冷暖房空気調整機器、厨房用品、給排水設備機器の販売、その代理、仲介及び輸出入業務
7. 建築物の清掃業務及び保守、管理業務とその請負
8. ビルメンテナンス業及びビル管理業務に関するコンサルティング業務
9. インテリア用品、家庭用電気製品の販売及びリフォーム事業並びにコンサルティング業務
10. 損害保険の代理業務及び生命保険の募集に関する業務
11. 広告デザインの企画及び制作並びにイベントの企画及び運営
12. 有価証券の保有、売買、管理、運用
13. 上記各号に附帯する一切の業務
四、発行可能株式総数は〇〇株とする。
五、設立に際し株式〇〇株を発行し、その発行価額は1株につき〇〇円とすること。
六、設立に際して発行する株式は、発起人において全株を引き受ける。
七、発起人の員数は〇名とし、現物出資は行わないものとする。
八、発起人は、会社設立に関して報酬及び特別利益を受けないこととし、
会社の設立費用は発起人が負担するものとすること。
九、払込みを取扱う金融機関及び取扱場所
(取扱場所)〇〇県〇〇市
(名称)株式会社〇〇銀行 〇〇支店
上記の決定事項を明確にするため、この決定書をつくり、発起人がこれに記名押印する。
令和〇〇年〇〇月〇〇日
発起人 〇〇 〇〇
発起人 〇〇 〇〇
以上
9月18日 発起人銀行口座の用意(この時点ではまだ発起人個人名義の口座)
9月20日 定款の作成・押印
実際に私が作成した定款が以下です(一部加工しています)。
株式会社〇〇〇〇定款
第1章 総則
(商号)
第1条 当会社は、株式会社〇〇〇〇と称し、英文では〇〇〇〇と表示する。
(目的)
第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1. 不動産の賃貸、管理、売買及びその仲介
2. 不動産に関するコンサルティング業務及びマーケティングリサーチ
3. アセット・マネジメント(個人金融資産の効率的運用)業務
4. 建築物及び室内空間のデザイン企画、制作並びにコンサルティング業務
5. 建物の調査、診断、改修、増改築工事に関する企画、設計、施工、請負及びコンサルティング業務
6. 建築資材、家具、家庭用電気製品、冷暖房空気調整機器、厨房用品、給排水設備機器の販売、その代理、仲介及び輸出入業務
7. 建築物の清掃業務及び保守、管理業務とその請負
8. ビルメンテナンス業及びビル管理業務に関するコンサルティング業務
9. インテリア用品、家庭用電気製品の販売及びリフォーム事業並びにコンサルティング業務
10. 損害保険の代理業務及び生命保険の募集に関する業務
11. 広告デザインの企画及び制作並びにイベントの企画及び運営
12. 有価証券の保有、売買、管理、運用
13. 上記各号に附帯する一切の業務
(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を〇〇県〇〇市に置く。
(公告方法)
第4条 当会社の公告方法は、官報に掲載する方法により行う。
第2章 株式
(発行可能株式総数)
第5条 当会社の発行可能株式総数は、〇〇株とする。
(株式の譲渡制限)
第6条 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。
(株式等の割当てを受ける権利を与える場合)
第7条 当会社の株式(自己株式の処分による株式を含む。)及び新株予約権を引き受ける者の
募集において、株主に株式又は新株予約権の割当てを受ける権利を与える場合には、その募集事項、
株主に当該株式又は新株予約権の割当てを受ける権利を与える旨及び引受けの申込みの期日は
取締役の決定によって定める。
(株主名簿記載事項の記載等の請求)
第8条 当会社の株式取得者が株主名簿記載事項を株主名簿に記載又は記録することを請求するには、
当会社所定の書式による請求書に株式取得者とその取得した株式の株主として株主名簿に記載され、
若しくは記録された者又はその相続人その他一般承継人が記名押印し、共同して提出しなければならない。
法務省令の定める事由による場合は、株式取得者が単独で請求することができ、その場合には、
その事由を証する書面を提出しなければならない。
(質権の登録及び信託財産の表示)
第9条 当会社の株式につき質権の登録又は信託財産の表示を請求するには、当会社所定の書式による
請求書に当事者が署名又は記名押印し、提出しなければならない。その登録又は表示の抹消についても
同様とする。
(手数料)
第10条 前二条に定める請求をする場合には、当会社所定の手数料を支払わなければならない。
(基準日)
第11条 当会社は、毎事業年度末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、
その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする。
2 前項のほか、株主又は登録株式質権者として権利を行使することができる者を確定するため必要が
あるときは、取締役の過半数の決定によりあらかじめ公告して臨時に基準日を定めることができる。
3 基準日株主が行使することができる権利が株主総会における議決権である場合において、第1項の
株主の権利を害しないときは、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該株主総会において
権利を行使する株主と定めることができる。
第3章 株主総会
(招集)
第12条 定時株主総会は、毎事業年度の末日の翌日から3か月以内にこれを招集し、臨時株主総会は
必要あるときに随時これを招集する。
(招集権者及び議長)
第13条 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役の決定により取締役社長がこれを
招集し、議長となる。
2 取締役社長に事故があるときは、あらかじめ定めた順序により、他の取締役が株主総会を招集し、
議長となる。
(決議の方法)
第14条 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使する
ことができる株主の議決権の過半数をもって行う。
2 会社法第309条第2項に定める決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する
株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。
(議事録)
第15条 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成する。
第4章 株主総会以外の機関
(取締役の員数)
第16条 当会社は、取締役1名以上を置く。
(代表取締役及び社長)
第17条 当会社に取締役が2名以上ある場合には、株主総会によって代表取締役1名以上を定め、
そのうち1名を社長とする。
2 当会社の取締役が1名の場合には、当該取締役を社長とする。
3 社長は当会社を代表する。
(役付取締役)
第18条 取締役はその互選により、取締役会長1名、取締役副会長、取締役副社長、専務取締役、
常務取締役各若干名を選定することができる。
(取締役の選任)
第19条 取締役の選任決議は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の
3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 取締役の選任決議は、累積投票によらないものとする。
(取締役の解任方法)
第20条 取締役の解任決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が
出席し、その議決権の3分の2以上の多数をもって行う。
(取締役の任期)
第21条 取締役の任期は、選任後5年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の
終結の時までとする。
2 補欠又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又はその選任時に在任する取締役の任期の
満了すべき時までとする。
(報酬等)
第22条 取締役が報酬、賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益は、
株主総会の決議によって定める。
第5章 計算
(事業年度)
第23条 当会社の事業年度は、毎年〇〇月1日から翌年〇〇月末日までとする。
(剰余金の配当)
第24条 剰余金の配当は、毎事業年度末日現在の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は
登録株式質権者に対して行う。
2 剰余金の配当がその支払開始の日から満3年を経過しても受領されないときは、当会社は、
その支払義務を免れるものとする。
第6章 附則
(設立に際して出資される財産の価額)
第25条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は金〇〇万円とする。
(最初の事業年度)
第26条 当会社の最初の事業年度は、当会社の成立の日から令和〇〇年〇〇月〇〇日までとする。
(発起人の氏名、割当を受ける株式数ほか)
第27条 発起人の氏名又は名称及び住所、割当を受ける設立時発行株式の数及び設立時発行株式と
引換えに払い込む金銭の額は次のとおりである。
住所
普通株式〇〇株 〇〇万円 氏名
住所
普通株式〇〇株 〇〇万円 氏名
(成立後の資本金の額)
第28条 当会社の成立後の資本金の額は、金〇〇万円とし、資本準備金の額は金〇〇万円とする。
(設立時取締役)
第29条 当会社の設立時取締役は、次のとおりである。
設立時取締役 〇〇 〇〇
(定款に定めのない事項)
第30条 本定款に定めのない事項は、すべて会社法その他の法令の定めるところによる。
以上、株式会社〇〇〇〇を設立するため、この定款を作成し、発起人が次に記名押印する。
令和 年 月 日
発起人 〇〇 〇〇
発起人 〇〇 〇〇
定款認証と実質的支配者の申告
定款が完成したら、次は定款認証です。本店所在地の都道府県内にある公証役場に事前予約をして進めます。予約の際には定款案とあわせて「実質的支配者となるべき者の申告書」をFAXまたはメールで送付する必要があります。
この「実質的支配者となるべき者の申告書」は、法人が反社会的勢力やテロ資金供与などに悪用されるのを防ぐための制度で、会社成立時に実質的支配者となる人物の氏名・住所・生年月日などと、暴力団員等に該当しないかを公証人に申告するものです。現在は書式に電子署名を付して提出することも認められており、対象範囲についても法改正のたびに更新されているため、最新の様式は日本公証人連合会のウェブサイトで確認するのが確実です。
代理人が手続きする場合は委任状が必要です(例:発起人が2名でそのうち1名が認証の場に出向く場合、出向かない発起人の委任状が必要)。実質的支配者の申告についても、委任する場合は委任者側の申告書もあわせて必要になります。当日、公証役場で内容を部分的に修正できることもあります。 ※本記事は千葉県内で法人設立した場合の説明です。地域によって運用が異なる場合がありますので、管轄の公証役場に事前確認することをおすすめします。
9月28日 定款認証
【必要書類の目安(紙の定款の場合)】
- 発起人の実印
- 発起人全員の印鑑証明書各1通
- 定款3通(紙定款の場合、うち1通に4万円の収入印紙。電子定款の場合は印紙不要)
- 認証手数料(資本金額・発起人の人数などの条件により1万5,000円〜5万円)
- 実質的支配者となるべき者の申告書
- 謄本交付手数料(1ページ250円程度、おおむね2,000円前後)
9月28日 資本金の振込み
発起人の銀行口座に資本金を振り込み、通帳のコピー(表紙、表紙裏、払込箇所)を用意し、払込証明書を作成します。
9月29日 登記申請(管轄法務局)
【必要書類】
- 設立登記申請書
- 定款
- 登記すべき事項(別紙で作成)
- 預金通帳のコピー
- 就任承諾書
- 取締役会議事録(取締役会を設置する場合)
- 取締役の印鑑証明書(発起人の印鑑証明書は不要)
なお、電子定款を利用する場合は、定款認証と設立登記のオンライン同時申請制度を使うことで、法務局の窓口に出向かずに手続きを進めることも可能になっています。
9月29日 市役所への書類提出
9月29日 県税事務所への事業開始等申告書(法人設立届出書)の提出
【必要書類】
- 市役所指定の法人設立届出書、登記簿謄本と定款のコピー
- 県税事務所指定の法人設立届出書、登記簿謄本と定款のコピー
ここで注意したいのは、提出する各書類は必ずコピーを取り、提出時に受領印をもらって会社保管用に残しておくことです。私は初めての手続きだったためコピーを持参せず、原本提出のみで済ませてしまいました。後になって「提出されていない」と言われた場合、証拠がなく困ることになります。役所の方を信用してはいますが(笑)、念のための備えは大切です。
登記完了までは、申請から約10日前後が目安です。
費用面のまとめ
紙の定款で進める場合と電子定款で進める場合とでは、法定費用に大きな差が出ます。
- 紙の定款:認証手数料(1万5,000円〜5万円)+収入印紙代4万円+謄本手数料(2,000円前後)
- 電子定款:認証手数料(同上)+電磁的記録の保存手数料(数百円程度)+謄本手数料
これに加えて、登録免許税(原則15万円、または資本金額の0.7%のいずれか高い方)、会社印の作成費用などがかかります。自分で電子定款を作成する場合は機材投資も考慮に入れて、総額でどちらが得かを判断するとよいでしょう。
おわりに
法人設立は、司法書士に依頼すれば確実でスピーディーですが、初期費用を抑えたい方にとっては自分で手続きを行うという選択肢も十分現実的です。制度は少しずつ変わっていくものですので、実際に手続きを進める際は、最新の様式・費用・運用について管轄の公証役場や法務局に確認しながら進めることをおすすめします。
続きは「不動産営業マンのための独立・起業マニュアル【その2】」で、宅地建物取引業免許の取得についてお話しします。


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[…] 前回は、法人設立の登記申請及び市役所、県税事務所への開業届のところまで説明しました。確認したい方はこちら↪︎不動産営業マンのための独立・起業マニュアル【その1】をご覧ください。実際に私が作成した発起人決定書や定款(一部加工します)がご覧にいただけますので、参考にしていただければ幸いです。 […]