社員「木村さまの件、申し訳ございませんでした。」
先輩「残代金決済がまだ先だからといって、全く連絡を取らないというのでは木村さまも不安になるよ。初めて不動産を買うのだから、本当に買って良かったのだろうかという気持ちになることも考えないと。私たちはプロなんだから」
社員「はい、私の対応がおざなりになっていて、木村様に全く連絡をしておりませんでした。ご迷惑をおかけ致しまして申し訳ございませんでした。」
先輩「私にではなく、木村様に対してその気持ちを忘れないようにしないとね。ちなみに、今回の場合は『おざなり』ではなく『なおざり』だね。」
本日の言葉
『私の対応がおざなりになっていて・・・』は間違い
『なおざり』と『おざなり』、どう違う?
今回ご紹介するのは、似ているようで実は意味が異なる言葉、「なおざり」と「おざなり」です。
LINEやチャットツールでのやり取りが当たり前になった今、文章を書く機会そのものは増えているのに、こうした言葉の使い分けは案外あいまいなまま、という方も多いのではないでしょうか。音の響きが似ていることもあり、なんとなく使ってしまいがちな言葉の代表格と言えます。
この二つ、実は意味がはっきりと異なります。
『おざなり』
いい加減に物事を済ますこと。その場しのぎの対応。
「お座なり」という漢字が当てられ、元々はお座敷などでの「その場限りの間に合わせ」という意味から来ているそうです。つまり、何かしらの対応はしているけれど、その中身が雑だったり、その場しのぎだったりする状態を指します。
『なおざり』
物事を軽んじて、放っておくこと。
「等閑」という漢字が当てられます。おざなりとは違い、そもそも対応そのものをしていない状態を表します。
つまり、
- おざなり → やることはやっているが、いい加減
- なおざり → そもそも何もやっていない
という違いがあるわけです。冒頭の会話でいうと、木村様に連絡を「していなかった」わけですから、正しくは「私の対応がなおざりになっていて・・・」となります。
なぜ不動産の現場でこの言葉が重要なのか
私たちのように不動産の仲介やご相談をお仕事にしていると、お客様との「連絡」そのものが信頼関係の土台になります。特に残代金決済までの期間や、相続に関するご相談など、長い期間をかけてお付き合いする案件では、こちらが「大きな進捗がないから」と連絡を控えてしまうと、お客様にとっては「放っておかれている」という不安に直結してしまいます。
これは本当によくある落とし穴です。私たち専門家からすれば「特に動きがないから連絡することもない」という理屈は成り立つのですが、初めて不動産を購入される方、初めて相続の手続きに向き合う方にとっては、動きがないことそのものが不安の種になります。「本当にこの人に任せて大丈夫だったのだろうか」という気持ちは、静かな時間の中でこそ膨らんでいくものです。
ですので、私たちが意識すべきは「おざなりな対応をしない」ことはもちろん、それ以前に「なおざりにしない」、つまり進捗がなくても、進捗がないという事実を伝える連絡を怠らないということです。
言葉を正しく使うことの意味
日本語には、こうした似た響きでありながら意味の異なる言葉がたくさんあります。言葉を正確に使い分けられるということは、単に語彙が豊富ということだけでなく、物事を丁寧に扱う姿勢そのものの表れでもあると私は考えています。
「なおざり」と「おざなり」、どちらも「きちんとしていない」という点では似ていますが、その中身は「対応の質が低い」のか「対応そのものがない」のかという、決定的な違いがあります。この違いを正しく理解し使い分けられることは、お客様への説明や、社内でのコミュニケーションにおいても、誤解を防ぐ大切な要素になります。
日本語は本当に奥が深いものです。今回のように、似た言葉の違いを一つひとつ丁寧に確認していくことが、結果としてお客様への対応の質を高めることにもつながっていくのだと思います。
参考になれば幸いです。それでは今日も一日、笑顔を忘れず頑張りましょう!


