1. 代理の基本
代理とは何か?
代理人が意思表示をすると、契約の効力は直接本人に帰属します。
場面: 札幌に住むAが、福岡のCが所有する土地を2億円で買いたいと思っています。しかし仕事が忙しくて福岡まで行けません。
こんな時に使えるのが代理制度です。信頼できる友人Bを代理人に任命して(代理権を与えて)、福岡に行ってもらい、C(相手方)との契約をまとめてきてもらえばよいのです。A(本人)は自分で動かなくても、土地を手に入れることができます。
代理人が錯誤・詐欺・強迫にあったら?
代理人が勘違いや詐欺・強迫によって契約した場合、契約を取り消せるのは本人です。
代理人の意思表示の効力は直接本人に帰属するため、取消権も本人に帰属します。
練習問題
Aの代理人BがCにだまされてDと土地の売買契約を結んだ。詐欺の事実についてAもDも善意無過失だった。AはDとの契約を取り消せるか?
答え→ここをクリック
→ 取り消せない
「AがCの詐欺にあって善意無過失のDと契約した」と読み替えます。DはAB間の事情を知らない善意無過失の第三者なので、AはDとの契約を取り消せません。なお、仮にDが悪意または善意有過失であれば取り消せますが、その場合も取消権はAだけにあり、Bにはありません。
顕名(けんめい)を忘れると?(第100条)
代理人は契約の際に「〇〇さんの代理で参りました」と名乗らなければなりません。これを顕名といいます。
| 状況 | 契約の効果は誰に? |
|---|---|
| 顕名あり | 本人 |
| 顕名なし(原則) | 代理人自身 |
| 顕名なしだが相手方が悪意または善意有過失 | 本人 |
場面: BがCのもとを訪れ、「〇〇さんの代理です」と一言も言わずに「あなたの土地を5000万円で売ってください」と言ったとします。Cとしては「Bが買いたいんだな」と思って当然です。そこで、顕名を怠ったBが買主とみなされます。5000万円の支払義務を負うのはBです。気の毒ですが、顕名を怠ったBの落ち度です。
練習問題
BがAの代理人として土地を売る代理権を持っていた。Bが「売主B」と表示してCと売買契約を結んだ。CはBがAの代理人だと知っていた。この場合、売買契約はBC間に成立する。○か×か?
答え→ここをクリック
→ ×(誤り)
相手方Cが「BはAの代理で来た」と知っていた(悪意)なら、契約の効力はAに帰属します。売買契約はAC間に成立します。
制限行為能力者でも代理人になれる?(第102条)
→ なれます。いわば「子どもへのお使い」でもOKです。
代理の効果は本人に帰属するため、代理人が未成年者で不利な契約をさせられても、損をするのは本人です。未成年者自身は損をしません。だから制限行為能力者でも代理人になれます。
また、本人は「未成年者が結んだ契約だから」という理由では取り消せません。不利な結果は、未成年者を代理人に選んだ本人の自業自得だからです。
⚠️ ただし、制限行為能力者が別の制限行為能力者の法定代理人として行った契約は取り消せます。
練習問題
未成年者Bが親権者の同意なしにAの代理人としてCと土地の売買契約をした。AはCとの契約を取り消せるか?
答え→ここをクリック
→ 取り消せない
権限の定めがない代理人は何ができる?(第103条)
「後はよろしく頼む」とだけ言われたような、具体的な権限が決まっていない代理人(権限の定めのない代理人)にできることは次の3つです。
① 保存行為(例:雨漏りを修理する)
② 利用行為(例:建物を賃貸して賃料を得る)
③ 改良行為(例:古い壁紙を新しいものに張り替える)
練習問題
権限の定めのない代理人は、保存行為しかできない。○か×か?
答え→ここをクリック
→ ×(誤り)
利用行為と改良行為もできます。
代理人がやってはいけない2つのこと(第108条)
① 自己契約
Aから「土地を誰かに売ってきてくれ」と頼まれたBが、自分自身が買主になること(自己契約)は禁止です。Bが自分に有利な価格で買えてしまい、Aの利益を損なう危険があるからです。ただし、AがあらかじめOKしているか、あとから追認すれば有効です。
② 双方代理
AからもCからも代理権を与えられたBが、両者の代理人として契約を結ぶこと(双方代理)も禁止です。どちらか一方を必ず裏切る結果になるからです。ただし、AとC両方の許諾(片方だけではNG)があれば有効です。
どちらも無断でやると無権代理とみなされます。
練習問題
AとC双方の代理人Bが両者間の売買契約を締結した。Aに損害が発生しなければ無権代理とはみなされない。○か×か?
答え→ここをクリック
→ ×(誤り)
損害の有無に関係なく、双方代理は無権代理とみなされます。
代理権はいつ消滅する?(第111条)
代理には委任による代理(本人から頼まれる)と法定代理(法律で決まる:親権者など)の2種類があり、消滅原因が一部異なります。
| 消滅原因 | 委任による代理 | 法定代理 |
|---|---|---|
| 本人の死亡 | ✅ 消滅 | ✅ 消滅 |
| 本人の破産 | ✅ 消滅 | ❌ 消滅しない |
| 代理人の死亡 | ✅ 消滅 | ✅ 消滅 |
| 代理人の破産 | ✅ 消滅 | ✅ 消滅 |
| 代理人の後見開始の審判 | ✅ 消滅 | ✅ 消滅 |
本人が破産しても法定代理権は消えないという点が重要です。
練習問題
AがBに甲土地の売却代理権を与えた後、Aが死亡した。BはAの死亡を知らず、過失もなかった。BはAの代理人として有効に土地を売却できるか?
答え→ここをクリック
→ できない
委任による代理は本人の死亡で消滅します。Bが知らなかったかどうかは関係ありません。
2. 復代理
復代理人は「代理人のスペア」(第106条)
復代理人は代理人の代理人ではなく、本人の代理人です。
場面: AからBが代理権を与えられていたが、Bが急病で動けなくなってしまいました。そこでBはB’(復代理人)を選任し、B’に代わりに契約をまとめてもらいました。この場合、契約の効力はAに帰属します。B’はAの代理人です。
・スペアキーを作っても、マスターキーでも開く
→ 復代理人を選任しても、代理人Bの代理権は消滅しない
・スペアキーで別の金庫は開けられない
→ 復代理人の代理権は代理人の代理権を超えられない
・マスターキーが使えなくなればスペアキーも使えない
→ 代理人の代理権が消滅すれば、復代理人の代理権も消滅する
練習問題
代理人が破産手続開始の決定を受けると、復代理人の代理権は消滅する。○か×か?
答え→ここをクリック
→ ○(正しい)
復代理人を選任できる条件と責任(第104・105条)
| 選任できる条件 | 責任 | |
|---|---|---|
| 委任による代理人 | 本人の許諾 または やむを得ない理由がある場合のみ | 債務不履行責任 |
| 法定代理人 | いつでも自由に選任できる | 原則:全責任。ただしやむを得ない理由がある場合は選任・監督責任のみ |
委任による代理人は「あなたを信頼して頼んだ」という関係なので、勝手に他人に任せることは基本的にできません。法定代理人は頼まれたわけではないため自由に選任できますが、その分責任が重いのです。
3. 無権代理
無権代理とは?(第113・116条)
本当は代理権がないのに、代理人のふりをして行った契約を無権代理といいます。
原則:無効(本人に勝手に1億円の支払い義務を負わせるのは理不尽)
例外:本人が追認すれば有効になります。ただし有効になるのは追認した時点からではなく、契約時にさかのぼってです。
また追認はCに直接行うのが原則ですが、Bに対して追認した場合でも、Cがその事実を知れば、Cへの追認とみなされます。
相手方を守る3つの権利(第114・115・117条)
無権代理だと知らず契約してしまった相手方を守るため、3つの権利が与えられています。
| 権利 | 内容 | 使える条件 |
|---|---|---|
| ① 催告権 | 本人に「追認するか答えろ!」と催促できる。期限内に答えがないと追認拒絶とみなされる | 善意・悪意問わず誰でも使える |
| ② 取消権 | 本人の追認がない間は契約を取り消せる | 相手方が善意の場合のみ |
| ③ 履行・損害賠償請求権 | 無権代理人に「契約を履行しろ」または「損害を賠償しろ」と請求できる | 相手方が善意無過失の場合(ただし相手方が善意有過失でも無権代理人が悪意なら請求できる) |
⚠️ 無権代理人が制限行為能力者の場合、③の請求はできません。
無権代理人と本人が相続し合ったら?(判例)
ケース1:無権代理人Bが本人Aを相続した場合
BはAの土地の所有者になるため、はじめからBが自分の土地をCに売ったものとみなされます。善意無過失のCは土地の引渡しを請求できます。
ケース2:本人AがBを相続した場合
Aには「本人として追認を拒絶する立場」と「Bの無権代理人としての責任を相続する立場」の両方があります。追認拒絶権を行使できる一方、CはAに土地の引渡しを請求できます。
いずれのケースでも、善意無過失のCは保護されます。
⚠️ ケース1で無権代理人が他の相続人と共同相続した場合は、共同相続人全員の追認がなければ自動的には有効になりません。
4. 表見代理(第109・110・112条)
表見代理とは、本当は完全な代理権がないのに、外から見ると代理権があるように見えるケースです。相手方Cの誤解を生じさせた責任が本人Aにあるため、契約が有効になります。
3つのパターンを覚えましょう。
| パターン | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| オーバー | 代理権の範囲を超えた契約をした | 賃貸の代理権しかないのに土地を売却した |
| アフター | 代理権が消滅した後に契約をした | 破産して代理権を失った後に土地を売却した |
| ネバー | そもそも代理権を与えていないのに「与えた」と表示した | 委任状を渡したが代理権はまだ与えていなかった |
いずれも、相手方Cが善意無過失なら、AC間の契約は有効に成立します。
オーバーとアフター、またはネバーとオーバーが組み合わさった場合も、相手方が善意無過失であれば契約は有効です。
表見代理も無権代理の一種!
相手方には①催告権、②取消権、③履行・損害賠償請求権があり、本人は追認もできます。
練習問題
AがBに土地売却の代理権を与え、BがCを復代理人に選任した。その後Bが破産し代理権を失った。破産後にCが善意無過失のDに土地を売却した。AがCの行為を追認するまでの間、DはこのをDは契約を取り消せるか?
答え→ここをクリック
→ ○(取り消せる)
Bの破産で代理権が消滅し、復代理人Cの代理権も消滅します。しかし相手方Dが善意無過失なので表見代理が成立し、AD間の契約は有効です。表見代理も無権代理の一種なので、Aの追認があるまでの間、DはこのDは契約を取り消せます。


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