仕事のできる人の交渉の第一歩は「正しさ」ではなく「向き合う姿勢」から

仕事のできる人の交渉の第一歩は「正しさ」ではなく「向き合う姿勢」から

営業の世界に足を踏み入れると、多くの新人が最初につまずくのが「自分の正しさを証明しようとすること」です。
商品知識をしっかり勉強して、説明できるようになった。競合よりも自社のサービスの方が優れていることを論理的に語れるようになった。だからきっとお客様は納得してくれる——そう信じて臨んだ商談で、思った以上にうまくいかない。

この経験をしたことがある人は多いはずです。なぜなら、人は「正しいから説得される」のではないからです。

ここで大切なのは「正しい情報を伝える」ことよりも、「相手とどう向き合うか」という姿勢なのです。


目次

「押し付け」が生む衝突

営業の現場でよく見られるのは、相手に意見を押し付けてしまい、結果的に衝突してしまうケースです。
「こんなことくらい分かってくれるはずだ」
「この商品の良さは当然伝わるはずだ」

こうした思い込みの裏側には、自分が相手に理想像を勝手に描いている心理があります。つまり「お客様はこうあるべきだ」と期待しすぎてしまっているのです。

しかし、現実には相手も一人の人間。私たちと同じように完璧ではありません。考え方や優先順位も違えば、気づきや価値観も異なります。


「完全ではない」という前提に立つ

営業で大切なのは、「相手は正しいけれども、完全ではない」と理解することです。
同時に「自分も正しいと思っているけれど、完全ではない」と認めることも重要です。

このスタンスに立つと、コミュニケーションの余白が生まれます。お互いが「完璧ではない」と認め合うことで、話し合う意味が出てくるのです。

逆に「自分は完全無欠だ」と思い込んでしまうと、相手の意見に耳を傾ける余地がなくなり、「YesかNoか」の二択で相手を裁くような危うい姿勢になってしまいます。これでは交渉は対話ではなく戦いになり、どちらかが勝ち、どちらかが負けるというゼロサムの関係に陥ります。


コミュニケーションは「不完全さ」から生まれる

ここで大切なことは、人と人とのコミュニケーションは「不完全さ」によって成り立っている、ということです。
完璧な人間同士であれば、そもそも会話も交渉も不要です。完全に同じ考えを持ち、完全に同じ価値観であれば、わざわざ話す必要はありません。

しかし、私たちは不完全だからこそ、言葉を交わし、理解を深め、時には妥協し、時には共感し合うのです。
営業の現場も同じです。相手の疑問や不安に耳を傾け、「そういう考え方もあるのですね」と受け止めることが信頼の第一歩になります。

実は夫婦関係も同じです、生まれや育った環境が違うもの同士が一緒に暮らすわけですから、当たり前にできることが違います。夫婦になると何故か身内と感じてしまい、「なんでそんなことが分からないの」「なんでそんなことができないの」なってしまう。それはそうです、夫婦は身内ではありません。ここで私が述べている身内とは、自分自身や親兄弟、生まれた時から一緒に環境をともにした人です。親や兄弟であれば上記のように「なんでそんなことが分からないの」と言っても良いでしょう。しかし、同じことを配偶者に言ってはいけません。育った環境が違うのです。「そういう考え方もあるよね」と受け止めることが夫婦の関係を良好にする第一歩になります。

期待しすぎることの落とし穴

営業マンが陥りがちなもう一つの罠が、「相手に期待しすぎること」です。
「この人ならきっと分かってくれる」
「自分が一生懸命説明すれば理解してもらえるはずだ」

こうした過度な期待は、裏切られたときに強い失望や怒りを生みます。
「どうして分かってくれないんだ」と不満が募り、態度や言葉に出てしまうと、相手はますます心を閉ざしてしまいます。

営業は「期待」ではなく「観察と理解」で進めるものです。相手がどんな背景を持ち、何を重視しているのかを丁寧に聞き取り、そこに合わせて提案する。その積み重ねが成果につながります。


「相手も正しい」という心構え

新人営業マンにぜひ覚えておいてほしいのは、「相手も正しい」という心構えです。
相手の言葉をそのまま肯定する必要はありませんが、「なるほど、そういう考え方もあるのですね」と一度受け止めることが重要です。

この一言は、相槌に見えて実は大きな意味を持ちます。
相手は「自分の意見を理解してもらえた」と感じ、あなたに心を開きやすくなるのです。営業の現場では、論破よりも共感の方がはるかに強い力を持っています。


「勝ち負け」ではなく「信頼」を築く

営業における交渉は、決して勝ち負けを競う場ではありません。
あなたが勝って相手が負けるような取引は、短期的には成立しても長期的には続きません。お客様が本当に満足し、信頼関係が築かれてこそ、リピートや紹介といった次の成果につながります。

だからこそ、新人営業マンは「どうやって正しさを証明するか」ではなく、「どうやって信頼を積み重ねるか」を考えるべきです。


まとめ:営業は「不完全さ」を認め合う対話の場

営業の交渉で覚えておきたいのは、

  • 正しさだけでは人は動かない
  • 自分も相手も「完全ではない」と理解する
  • 過度な期待は衝突を生む
  • 勝ち負けよりも信頼を優先する

という4つのポイントです。

あなたが新人営業マンとして最初に身につけるべき力は、商品知識や話術の前に「相手と同じ目線で向き合う姿勢」です。
完璧さを求めるのではなく、不完全さを受け入れる。その心構えが、あなたの営業人生を大きく変えていくはずです。

営業は戦いではなく、対話です。そして対話は「正しさの証明」ではなく、「相手と自分の不完全さを前提にした理解」から始まります。

これを胸に刻んで、次の商談に臨んでみてください。きっと相手の反応が変わり、あなた自身の営業に対する姿勢も前向きなものになるはずです。

仕事のできる人の交渉の第一歩は「正しさ」ではなく「向き合う姿勢」から

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