2025年10月20日、不動産適正取引推進機構が「令和7年度宅地建物取引士試験(宅建士試験)」の受験者数を発表しました。
申込者数は30万6,099人、実際に受験したのは24万5,463人。いずれも昨年を上回り、受験率も80.2%と高水準を維持しています。
この数字をどう捉えるか。ただの「人気資格」では済まされない背景があります。
ここには、日本人の“働き方の価値観の変化”と、“不動産という仕事の再評価”が映し出されています。
なぜ今、宅建士を目指す人が増えているのか
宅建士は、不動産取引の専門家として法律で独占業務を与えられた国家資格です。
毎年30万人前後が挑戦する“超メジャー資格”でありながら、合格率は15〜17%前後。難関とは言えませんが、決して簡単でもありません。
それでも挑戦者が減らない理由は明確です。
一言で言えば、「不動産という仕事が“自分で人生を設計できる仕事”として注目されている」からです。
不動産業界は、かつて「営業が大変」「ノルマが厳しい」などのイメージが先行していました。
しかし今は、不動産テックの進化やSNSによる個人集客が広がり、一人でも仕事をつくり出せる時代になっています。
宅建士資格を持つことで、会社員として働く以外にも、
- フリーランスで売買・賃貸の仲介を行う
- 不動産投資家として事業を拡大する
- 空き家・相続・地方再生の分野でコンサルを行う
など、多様なキャリアパスが現実的になりました。
「資格=安定」ではなく、「資格=自分の人生をデザインするための武器」。
これが、令和の宅建ブームの本質だと思います。
不動産業界が迎えている“大転換期”
もうひとつの要因は、業界そのものの構造変化です。
近年、不動産業界には3つの大きな流れがあります。
- デジタル化・オンライン化の加速(電子契約・スマート申込・AI査定)
- 人口減少と空き家増加による地域密着型ビジネスの再構築
- 副業・複業人材の参入による新しい働き方の広がり
つまり、「企業に属さずに個人で活動する不動産プレイヤー」が急増しているのです。
らくだ不動産や、私の会社のような地域密着型エージェント制もその流れのひとつ。
資格を持つことで、会社の枠を超え、信頼を自ら証明できる立場になれる。
この“自立の象徴”として宅建士資格が再び脚光を浴びているのです。
心理学的に見た「資格ブーム」の背景
心理学的な観点から見ても、今の資格ブームは単なる“スキルアップ熱”ではありません。
むしろ、**「不確実な時代に自分を守るための安心感」**を求める人が増えているのです。
AIの台頭、経済格差、終身雇用の崩壊。
多くの人が、「何かあったとき、会社以外で稼ぐ力を持ちたい」と感じています。
資格取得の動機には、
- 「転職や独立への備え」
- 「家族を守りたいという責任感」
- 「自分の力で生きたいという自立心」
など、心理的な安全を求める要素が含まれています。
宅建士は、その象徴的な存在です。
実務・法律・倫理を体系的に学べるため、単なる“資格”ではなく、“人生の武器”として機能するのです。
資格を取ったその先にあるもの
大切なのは、合格そのものではなく、「資格をどう活かすか」。
私自身、20年以上この業界に身を置いてきて実感するのは、
宅建士資格はスタートラインであり、ゴールではないということです。
資格を取っても、誠実に人と向き合えない人は長続きしません。
逆に、お客様の人生を支える覚悟を持つ人は、資格を超えて信頼を得ていきます。
資格があっても“人間力”がなければ意味がない。
しかし、“人間力”だけでも信用は得られない。
その両輪を支えるのが、宅建士という「信頼の証」なのです。
「宅建士試験」は、時代の鏡である
宅建士試験の受験者が増えるというニュースは、単なる統計ではありません。
それは、人々が「自分の人生を自分で選び取ろう」としている証拠です。
私たちが今生きている時代は、会社や肩書きに頼る時代ではなくなりました。
「資格を通して、自分の軸を取り戻す」——そんな流れが、静かに広がっているのです。
11月26日の合格発表日。
その日、数字の裏側には、それぞれの人生ドラマがあります。
合格した人も、残念だった人も、すでに何かを掴んでいる。
宅建士試験とは、単なる知識試験ではなく、
“自分で生きる覚悟”を問う人生の通過儀礼なのかもしれません。
まとめ
- 受験者数24万人超は「働き方の多様化」と「自己防衛意識」の表れ
- 宅建士資格は“安定”ではなく“自立”の象徴へ
- 不動産業界はAIと地域密着の両輪で大変革期
- 合格よりも大切なのは「どう生かすか」という人生観
宅建士を目指すすべての人へ。
資格はゴールではなく、あなた自身の“始まり”です。


