【電話受付】電話対応は「言葉」で伝わる第一印象

電話対応は「言葉」で伝わる第一印象

社会人になると、避けて通れないのが「電話対応」です。今ではメールやチャットが主流になってきましたが、取引先やお客様との大切なコミュニケーションの場として、電話はいまだに重要な位置を占めています。

電話は顔が見えないからこそ、言葉や声だけで印象が決まってしまいます。表情や身振り手振りが通じないため、声のトーンや言葉選びが、その人自身の人間性や会社の姿勢を映す“鏡”となるのです。

では、よくある「言葉の間違い」や「違和感のある表現」を見直しながら、より美しい電話対応について考えてみましょう。


1. 声の明るさは「心の姿勢」

心理学の研究では、声のトーンは話し手の気持ちをそのまま反映するといわれています。落ち込んだ気持ちで電話をとれば、声も沈み込み、相手には「不安」や「冷たい印象」を与えてしまいます。逆に、口角を上げて笑顔をつくって電話をすれば、不思議と声も明るくなります。

「笑顔は声にのる」──これは接客の世界でよく言われる言葉です。実際に、電話口で相手の表情は見えませんが、人は無意識のうちに声の明るさから相手の表情を想像しています。だからこそ、電話は「笑顔で受ける」ことが基本なのです。

ハロー効果──小さな言葉遣いが全体の評価を左右する

心理学の「ハロー効果」とは、一部の特徴が全体の印象に大きな影響を与える現象です。たとえば、電話で「言葉遣いが丁寧だな」と思われれば、それだけで「信頼できる会社」「しっかりした人」という評価につながります。

逆に、一つの不自然な表現や曖昧な言い回しがあると、それだけで「雑な会社なのかもしれない」という誤解を生むこともあります。電話対応における「言葉の選び方」は、このハロー効果を活用するうえで極めて重要なのです。


2. 「お待たせいたしました」は気配りの証

電話を3コール以内に取るのが理想とされていますが、現実にはそうはいかないこともあります。そんなときの一言が「お待たせいたしました」。

これは単なる形式的な挨拶ではなく、相手の時間を奪ってしまったことに対する小さな「お詫び」と「感謝」が込められています。哲学的に言えば、相手の存在を尊重する態度の表れです。相手の立場に立って「待たせてしまった」という事実を認める。この謙虚さが、ビジネスの信頼関係を築いていきます。

「お待たせいたしました」に込められた心理的効果

3コール以内に出られなかった場合の「お待たせいたしました」は、単なる形式的な言葉ではありません。心理学的には「相手の立場に共感している」というメッセージを送っています。

人は「自分の気持ちをわかってくれる」と感じた瞬間、安心感と信頼感を抱きます。小さな一言ですが、相手に「この会社は丁寧だ」というプラスの印象を残すのです。


3. 「お休みをいただいております」の違和感

よく耳にする表現ですが、実は注意が必要です。
「〇〇はお休みをいただいております」──このフレーズに違和感を持つ人は少なくありません。なぜなら「いただく」という謙譲語を、自社の人間に対して使っている点に不自然さがあるからです。さらに、「会社から休みをいただいた」という印象を生み、相手に余計な誤解を与えることもあります。

正しい言い回しとしては、シンプルに「〇〇は本日休んでおります」「ただいま不在にしております」で十分です。過剰に丁寧にしようとして、かえって不自然になる──これは日本語にありがちな落とし穴です。


4. 「とんでもございません」?

もう一つ、誤用として知られているのが「とんでもございません」。
この言葉は多くの人が使っているため、もはや一般化しつつあります。しかし厳密には正しくありません。「とんでもない」が正しい表現で、「とんでもないです」「とんでもないことでございます」と言うのが望ましいのです。

言葉は時代とともに変化します。現代語として「とんでもございません」も広く使われているため、完全に間違いとは言い切れません。ただ、美しい日本語を心がけるのであれば、正しい表現を選んでおくに越したことはありません。これは「プロフェッショナルとしての言葉の矜持」に関わる部分です。


5. 言葉は「心の習慣」をつくる

ここで一つ、哲学的な視点を加えてみましょう。
アリストテレスは「人は習慣によって徳を身につける」と語りました。つまり、普段どのような言葉を使うかが、その人の人格を形づくっていくのです。電話対応で何気なく発する一言にも、その人の価値観や姿勢が表れます。

美しい言葉を選び続けることは、相手に対しての思いやりを積み重ねることです。それはやがて「信頼」という形になって返ってきます。

メラビアンの法則──電話は「声」がすべて

心理学者アルバート・メラビアンの研究はみなさんも一度は耳にしたことがあるとおもいます。対面でのコミュニケーションでは「言語情報は7%、声のトーンは38%、表情などの視覚情報が55%」の影響を持つと言われています。

電話の場合は視覚情報がゼロですから、「声」と「言葉」の比重が圧倒的に大きくなります。つまり、普段以上に「声の明るさ」と「言葉遣い」が、相手の印象を左右するのです。


6. 実践チェックリスト

最後に、今日からすぐに実践できる「電話対応・言葉遣いチェックリスト」をまとめます。

  • ☑ 電話に出る前に「笑顔」をつくる
  • ☑ 3コール以内に出られなかったら「お待たせいたしました」と添える
  • ☑ 相手が名乗ったら「いつもお世話になっております」と笑顔の声で返す
  • ☑ 「〇〇は休みをいただいております」ではなく「休んでおります」とシンプルに
  • ☑ 「とんでもございません」よりも「とんでもないです」と言う

おわりに

電話対応は単なるマナーではなく、会社や自分自身の“顔”そのものです。顔が見えないからこそ、言葉一つひとつが大きな意味を持ちます。

そして言葉は習慣になり、習慣は人格をつくります。普段から美しい言葉遣いを意識することが、自分の信頼を積み上げ、相手との関係を豊かにしていくのです。

社会人としての第一歩を踏み出す人にも、長年働いてきた人にも、この小さな心がけが未来の大きな差を生みます。今日から、電話の向こうの相手に「気持ちのいい人だな」と思っていただけるような言葉を選んでいきましょう。

電話対応は「言葉」で伝わる第一印象

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