経理・総務を担当していると、毎年5月末ごろに「特別徴収税額の決定通知書」が届き、6月から翌年5月までの住民税を給与から天引きする作業が始まります。
しかし、この「住民税の特別徴収」、制度の仕組みや所得税との違いを正確に理解していないと、退職者対応や税額変更の場面で混乱が起きやすいものです。
今日は、制度の全体像から実務上の注意点まで、分かりやすく解説します。
1. 住民税の基本構造
まず、住民税とは「都道府県民税」+「市区町村民税」の総称です。
個人が支払う住民税には、以下の5種類があります。
- 所得割 … 前年の所得に応じて課税される部分
- 均等割 … 所得に関わらず定額で課税される部分
- 利子割 … 預貯金の利息にかかる税
- 配当割 … 上場株式などの配当にかかる税
- 株式等譲渡所得割 … 株式売却益にかかる税(源泉徴収口座内)
このうち、給与からの天引き(特別徴収)や自分で納付(普通徴収)の対象になるのは所得割と均等割のみです。
利子割や配当割などは、受取時点で金融機関等が源泉徴収しています。
2. 課税のタイミングと特徴
住民税の課税は、「前年の所得」に基づく」のが大きな特徴です。
たとえば、2025年6月から2026年5月にかけて徴収される住民税は、2024年1月〜12月の所得を元に計算されます。
- 所得税は「その年の所得」に対して課税(原則は毎月概算→年末調整で確定)
- 住民税は「前年の確定した所得」に対して課税(確定額を12等分して翌年6月から天引き)
この「1年遅れ課税」を理解していないと、たとえば退職翌年の住民税がまだ残っているのに、給与から引けなくなるといった事態で混乱します。
3. 徴収方法は2種類
(1) 特別徴収(会社経由)
会社が毎月の給与から天引きして納付する方法です。
流れは次のとおり。
- 1月:会社が「給与支払報告書」を市区町村に提出
- 5月末:市区町村から「特別徴収税額の決定通知書」が会社へ届く
- 6月〜翌5月:決定税額を12等分し、毎月給与から天引き→翌月10日までに納付
ポイントは、6月分だけ端数調整のため他の月より多くなること。
年税額を単純に割ると端数(1円未満)が出るため、これを6月分に上乗せする慣習があります。
(2) 普通徴収(本人納付)
各個人に納税通知書が届き、年4回(6月・8月・10月・翌1月)に分けて納付します。
口座振替や窓口払いも可能です。
ただし、給与所得者は原則として特別徴収が義務化されており、普通徴収は退職後やパートタイムなど特例的な場合に限られます。
4. 退職者対応のルール
退職時期によって住民税の扱いが異なります。ここは総務担当者が混乱しやすいポイントです。
- 6月〜12月退職
- 原則:退職後は普通徴収に切り替え(本人が納付)
- 例外:本人同意で翌年5月分までを一括徴収可能(最終給与から)
- 1月〜4月退職
- 翌5月分までを必ず一括徴収(法律上義務)
理由はシンプルで、住民税は「前年所得分を翌年5月まで払う」必要があるため、1〜4月に辞めてもほとんど残額があるからです。
5. 所得税との違いを押さえる
比較項目 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
課税対象 | 当年の所得 | 前年の所得 |
税額確定時期 | 年末調整または確定申告 | 確定申告や給与支払報告書提出後 |
徴収期間 | 当年1月〜12月 | 翌年6月〜翌々年5月 |
月ごとの変動 | あり(残業や賞与で変動) | なし(確定額を12等分) |
この違いを知っておくと、「住民税が上がった理由」や「退職翌年も住民税がある理由」を社員へ説明しやすくなります。
6. 実務担当者の注意ポイント
- 5月末の決定通知書管理
- 個人ごとの税額と本人控えを確実に渡す。誤配布防止が必須。
- 6月分の端数調整
- 金額差を説明できるように。社員から「6月だけ高い」と質問が来やすい。
- 退職時の最終給与計算
- 一括徴収の有無、控除可能額、本人同意書の有無を確認。
- 普通徴収への切替手続き
- 退職後、自治体に切替届出を出さないと未納扱いになる恐れあり。
まとめ
住民税の特別徴収は、制度上は単純でも、「前年課税」「退職時期別対応」「所得税との違い」といった要素を正確に理解しないと、現場でミスが生じやすい分野です。
経理総務担当としては、
- 毎年1月の給与支払報告書提出
- 5月末の決定通知書処理
- 退職者対応フローの整備
この3つを確実に押さえておくことが、トラブル防止の鍵となります。
「なぜこうなるのか」を理解しておけば、社員からの質問にも自信を持って答えられ、経理総務部門の信頼性も高まります。
参考になる本としては、以下の書籍は図解も多くておすすめです。