社会人になると、学生時代とは比べものにならないほど多様な年齢・立場の方とコミュニケーションを取る機会が増えます。社内の先輩や上司、他部署の役員、取引先の担当者など、一定のビジネスマナーを心得た方々と日々やり取りをする中で、「言葉選び」ひとつで相手の受け取り方が大きく変わることを実感する場面も多いはずです。
近年はチャットツールやオンライン会議での対話が当たり前になり、対面よりも文字だけで伝わる情報が増えています。声のトーンや表情が伴わない分、文章の柔らかさや配慮がより重要になってきました。そこで改めて押さえておきたいのが「クッション言葉」です。
■ クッション言葉とは
ビジネスの現場では、「いつもお世話になっております」から始まり、「かしこまりました」「承知いたしました」「少々お待ちください」など、決まった言い回しが日常的に使われています。これらは使い慣れているうちに、意識せずとも自然に口をついて出るようになるものです。
日本語には、尊敬語・謙譲語・丁寧語のほかに、聞き手の気持ちに配慮するための独特な表現があります。要件をそのままストレートに伝えるのではなく、ワンクッション置くことで表現全体を柔らかく包み込む役割を果たすのが「クッション言葉」です。特に、相手にとって都合の悪い内容を伝える場面でその効果を発揮するため、社会人として身につけておきたいスキルのひとつと言えます。
■ なぜ今、クッション言葉が重要なのか
ビジネスの現場では、互いの立場や利害が交差する場面が数多くあります。相手に何かを依頼するということは、多かれ少なかれ相手の時間や労力を借りることでもあります。社内の先輩や上司であれば、後輩からの頼み事に快く応じてくれることも多いでしょう。しかし、それを「当たり前」と捉えるのではなく、「相手の時間をいただいている」という意識を持つことが大切です。この意識があれば、クッション言葉は自然と身についていきます。
■ 場面別・使えるクッション言葉
・「お手数おかけしますが……」
相手に身体的・精神的な労力を使わせる場面で。
例:「お手数おかけしますが、内容をご確認のうえ〇月〇日までにご返信いただけますでしょうか。」
・「恐れ入りますが(恐縮ですが)……」
相手に何かを依頼する場面で。
例:「恐れ入りますが、もう一度お名前を伺ってもよろしいでしょうか。」
・「差し支えなければ(よろしければ)……」
相手に質問をする場面や、自分の意向を伝える場面で。
例:「差し支えなければ、担当より折り返しご連絡させていただいてもよろしいでしょうか。」
・「誠に勝手ながら……」
こちら側の都合を伝え、相手に理解・同意を求める場面で。
例:「誠に勝手ながら、本日の営業時間は19時までとさせていただきます。」
・「せっかくですが(あいにくですが)……」
タイミングが合わず、相手の希望に応えられない場面で。
例:「せっかくのお申し出ですが、あいにく在庫を切らしております。」
・「申し訳ございませんが……」
相手の期待に沿えない、あるいは意見を否定する場面で。
例:「申し訳ございませんが、こちらの詳細についてはお答えいたしかねます。」
■ チャットやメールでも活躍する
対面や電話だけでなく、Slackやチャットワーク、メールといったテキストベースのやり取りでも、クッション言葉は威力を発揮します。文字だけのコミュニケーションは、意図せず冷たい印象や高圧的な印象を与えてしまうことがあります。一文にクッション言葉を添えるだけで、同じ内容でも受け取る側の印象は大きく変わります。特に社外とのやり取りや、初対面に近い相手とのコミュニケーションでは、意識的に取り入れることをおすすめします。
■ 使用上の注意点
クッション言葉を使ううえで、ひとつだけ気をつけていただきたい点があります。それは「同じ言葉を繰り返し使わない」ということです。便利な表現だからといって多用しすぎると、慇懃無礼な印象を与えたり、かえって回りくどく煩わしい印象を与えてしまいます。状況や相手に応じて表現を使い分け、要所要所で効果的に使うことがポイントです。
言葉は使い方ひとつで、相手との関係性を大きく左右します。クッション言葉は特別なテクニックではなく、相手を思いやる気持ちを言葉に落とし込んだものです。日々のコミュニケーションの中で少しずつ意識して使っていくことで、自然と身につき、円滑な人間関係の構築にもつながっていくはずです。
それでは、本日もお仕事を楽しみましょう。


