独学で宅建合格【権利関係】制限行為能力者

不動産実務家として多くの取引に携わってきた私から見て、宅建試験における「権利関係(民法等)」は、不動産ビジネスという荒波を生き抜くための「思考のOS」のようなものです。試験だけでなく、実際の実務の場面でも必要な知識なのでしっかりインプットしましょう。

そして権利関係は宅建試験全50問のうち、14問を占めます(民法10問、その他借地借家法・区分所有法・不動産登記法で4問)。この科目の重要性は、ズバリ「合格への鉄壁の防御壁」になる点にあります。宅建業法などの暗記科目が得点源(オフェンス)であるなら、権利関係は失点を防ぐディフェンスです。ここでコンスタントに7〜8点を確保できれば、他の科目で多少のミスがあっても揺るがない「合格の壁」を築けます。

それでははじめていきましょう。

目次

まず「契約は守るのが基本」です

たとえば、不動産屋さんからマンションを1億円で買う契約をしたとしましょう。この場合、あなたはその1億円をちゃんと支払わなければなりません。「やっぱりやめた!」は原則として通用しないのです。

でも、例外があります

例外① 判断力が不十分な人を守る仕組み

大人で十分な判断力があれば問題ありません。でも世の中には、まだ判断力が育っていない子どもや、精神的な障害がある方もいます。

そういった方が悪徳業者に言いくるめられて「1億円の契約」をさせられたとき、「契約したんだから払え!」では、あまりにかわいそうですよね。

そこで民法は、判断力が十分でない人を「制限行為能力者」(一人では契約できない人)と定め、契約を自由に取り消す権利を与えて保護しています。

例外② だまされて契約してしまった場合

大人でも、悪徳業者にだまされて契約してしまうことがあります。この場合も「契約したんだから払え!」では理不尽ですよね。

そこで民法は、だまされて結んだ契約も取り消せるとしました。これを「意思表示制度」といいます(「無効」になるケースもあります)。


ここで重要ポイント!「無効」と「取消し」は全然違う!

よく混同されますが、この2つはまったく別物です。

意味
無効最初からなかったことになる。何もしなくても効力ゼロ
取消し取り消すまでは有効。でも取り消した瞬間、最初から無効だったことになる

練習問題

「制限行為能力者が行った契約は無効である。」○か×か?

答えは→ここをクリック

→ 答えは×(誤り)

制限行為能力者の契約は「無効」ではなく「取消し」ができるのです。この違い、宅建試験では頻出なので必ず覚えておきましょう!


制限行為能力者は4種類いる

制限行為能力者には、次の4種類があります。

  1. 未成年者
  2. 成年被後見人
  3. 被保佐人
  4. 被補助人

特に①〜③が試験で重要です。次節から一つずつ丁寧に見ていきましょう!

制限行為能力者 ① 未成年者

未成年者の契約、基本ルールはこれだけ!

未成年者が親の同意なしに自分だけで結んだ契約は、取り消すことができます。

ただし、いくつか例外があります。

ケース取り消せる?
親の同意なしに契約した高額商品を買った✅ 取り消せる
もらうだけの契約タダで物をもらった❌ 取り消せない
借金を免除してもらった借金をチャラにしてもらった❌ 取り消せない
親にもらったお小遣いを使った文房具を買った❌ 取り消せない
親から営業を許可されたバイトや商売の契約❌ 取り消せない

未成年者って何歳まで?

18歳未満の人が未成年者です(2022年の民法改正で20歳から引き下げられました)。


保護者は誰?「法定代理人」を覚えよう

未成年者には判断力がまだ十分ではないため、保護者がついています。

法定代理人 = 親権者(お父さん・お母さん)
             または
            未成年後見人(親がいない場合に付けられる保護者)

この「法定代理人」という言葉は試験頻出なので、しっかり覚えておきましょう!


法定代理人には4つの権限がある

① 取消権 ─ 契約をなかったことにできる

未成年者が一人で結んだ不利な契約(例:1万円の時計を10万円で買わされた!)は取り消せます。

ポイント:取り消せるのは誰?

未成年者本人 も、法定代理人 も、どちらも取り消せます。

② 同意権 ─ 事前にOKを出す

法定代理人が事前に同意した契約は完全に有効で、取り消せません。「ちゃんと親の許可を取ったなら問題なし」ということですね。

③ 追認権 ─ あとからOKを出す

同意なしに結んだ契約でも、法定代理人があとから承認(=追認)すると有効になります。

ここが試験のポイント!

追認すると、追認した日からではなく、契約した日にさかのぼって有効になります。

例:

  • 3月1日に契約 → 4月1日に追認
  • → 3月1日から有効!(4月1日からではありません)

④ 代理権 ─ 代わりに契約できる

法定代理人は未成年者に代わって、本人の代理として契約を結ぶこともできます。


練習問題

未成年者Aが親Bの同意なしにCから建物を買った。AはBの同意なしに契約を取り消した。BはAの取消しを「自分が同意していない」として、無効にできるか?

答えは→ここをクリック

→ 答えは×(誤り)

未成年者本人Aは、法定代理人の同意なしに自分で取り消すことができます。BはAの取消しを覆すことはできません。


これだけは覚える 未成年者のまとめ

未成年者は、同意なしに結んだ”損する契約”だけ取り消せる! 取消権は本人と法定代理人、両方が持っている!

制限行為能力者 ② 成年被後見人

基本ルール:成年被後見人がやった契約は、ほぼ全部取り消せる!

未成年者よりもさらに手厚く保護されているのが、この「成年被後見人」です。


成年被後見人って、どんな人?

重い精神障害などにより、1億円と1円の区別もつかないほど判断力を失っている方が実際にいます。そういった方を守るため、家庭裁判所が正式に「この人を成年被後見人とします」という決定(=後見開始の審判)を下します。

つまり成年被後見人とは、次の2つの条件を両方満たす人です。

① 精神障害などにより、判断力(=「事理を弁識する能力」)を
  常にほぼ失っている状態にある

② 家庭裁判所から「後見開始の審判」を受けた

そして、この方には成年後見人という保護者がつきます。成年後見人も、未成年者の親と同じく法定代理人です。


未成年者と何が違うの?

成年被後見人は未成年者よりも判断力がさらに弱いため、保護がより強力です。大きな違いは2つあります。

未成年者成年被後見人
法定代理人の同意を得た契約❌ 取り消せない✅ 取り消せる
損しない契約(もらうだけ等)❌ 取り消せない✅ 取り消せる

なぜここまで徹底して取り消せるのか?「同意してもいいですよ」と言われても、その意味自体が理解できないほど判断力が低下している場合があるからです。

唯一の例外:日用品の購入など、日常生活上のごく普通の契約だけは自分一人でできます。


「判断力が戻っていても」取り消せる!

精神障害があっても、調子のいい日には判断力が戻ることがあります。でも、後見開始の審判が正式に取り消されない限り、成年被後見人のままです。

つまり、たまたま判断力が回復している間にやった契約であっても、取り消せます。


成年後見人の権限

未成年者の法定代理人と同様に、成年後見人にも次の権限があります。

取消権 ─ 契約を取り消せるのは、本人と成年後見人の両方です。

追認権 ─ 成年後見人が追認すると、取り消せなくなります。

代理権 ─ 成年後見人は、本人に代わって契約を結べます。

そのほか、知っておきたいポイントが2つあります。

成年後見人は複数人でも、法人(社会福祉法人など)でもOKです。一人に限定されていません。

居住用の建物・土地を動かすには家庭裁判所の許可が必要です。成年後見人が成年被後見人の住んでいる建物や敷地を「売る・貸す・抵当権を設定する」といった行為をするには、必ず家庭裁判所の許可を得なければなりません。


練習問題

成年後見人が、成年被後見人の住んでいる建物に第三者の抵当権を設定する場合、家庭裁判所の許可は必要か?

答えは→ここをクリック

→ 答えは○(正しい)

成年被後見人の居住用の建物・敷地への抵当権設定は、家庭裁判所の許可が必要です。これは売却・賃貸借も同様です。


これだけは覚える 成年被後見人まとめ

成年被後見人は、同意を得てやった契約も、損しない契約も取り消せる! ただし、日用品など日常生活上の契約だけは例外! 居住用不動産を動かすには家庭裁判所の許可が必要!

制限行為能力者 ③ 被保佐人

基本ルール:重大な契約だけ、同意が必要!

被保佐人は、成年被後見人よりは判断力がある分、原則として自分一人で契約できます。 ただし、大損する恐れのある重大な契約だけは、保佐人の同意が必要です。同意なしにやった場合は取り消せます。


被保佐人って、どんな人?

成年被後見人ほどではないけれど、精神障害などにより判断力がかなり不十分で、一人では心配な方です。家庭裁判所が「保佐開始の審判」を下すことで、被保佐人になります。

① 精神障害などにより、判断力が「著しく不十分」な状態にある

② 家庭裁判所から「保佐開始の審判」を受けた

被保佐人には保佐人という保護者がつきます。


3人の比較:どれだけ保護が必要?

判断力自分一人でできる範囲
未成年者不十分限られる
成年被後見人ほぼなし日用品購入のみ
被保佐人やや不十分原則なんでもOK(重大な契約以外)

被保佐人は「一人前に近い」存在です。だからこそ、普段の契約は自由にできます。


同意が必要な「重大な契約」6つ

以下の契約だけは、保佐人の同意なしにやると取り消せます。 しっかり覚えましょう!

内容補足
土地の売買・5年超の賃貸借5年ちょうどならOK!
建物の売買・3年超の賃貸借・増改築など
高額商品の売買タバコ1箱程度ならOK
借金・保証人になること
贈与・遺贈を断ること
①〜⑤を、他の制限行為能力者の法定代理人として行うこと

⑥は少しイメージしにくいので具体例で説明します。

例: 被保佐人AがBという成年被後見人の法定代理人だったとします。AにはCという保佐人がいます。この状況でAがCの同意なしに、BのためにBの土地を売るなど①〜⑤の契約をした場合、その契約を取り消せます。


保佐人の権限

取消権 ─ 重大な契約を取り消せるのは、本人と保佐人の両方です。

追認権 ─ 保佐人が追認すると、取り消せなくなります。


練習問題

被保佐人が保佐人の同意なしに、土地を5年間賃貸する契約をした。取り消せるか?

答えは→ここをクリック

→ 答えは×(取り消せない)

5年「超」が条件です。5年ちょうどは重大な契約に該当しないため、同意なしでもOKで、取り消せません。細かいですが試験頻出のひっかけです!

どっちとも取れるのでは?と思う人も多いと思いますが、宅建の試験はこのような問題が多いので過去問を解いて慣れていいきましょう。


これだけは覚える 被保佐人まとめ

被保佐人は、同意なしにやった「重大な6つの契約」だけ取り消せる! それ以外の普通の契約は、一人でできる! 土地の賃貸借は「5年超」、建物は「3年超」が境界線!

制限行為能力者 ④ 共通ルール

① 相手方の「催告権」─ いつまでも宙ぶらりんは困る!

制限行為能力者と契約した相手方は、「取り消されるかも…」という不安な状態が続きます。そこで、「取り消すの?追認するの?はっきりしてくれ!」と催促できる権利が相手方に与えられています。これを催告権といいます。

誰に催告する?答えがないとどうなる?

これが試験の最頻出ポイントです。必ず覚えましょう!

催告の相手期限内に答えがない場合
保護者(親・成年後見人・保佐人)追認したとみなされる
被保佐人本人取り消したとみなされる

なぜ違うの?

保護者は一人で追認できる人なので、答えがなければ追認とみなしても問題ありません。でも、被保佐人本人は一人では追認できない人なので、答えがなくても追認とみなすのはかわいそう。だから取り消しとみなされます。

練習問題

被保佐人Aが保佐人Bの同意なしに土地をCに売った。CがA本人に「1か月以内にBの追認を得てきて」と催告したが、期限内に返答がなかった。この契約はどうなる?

答え→ここをクリック

→ 取り消し(「追認された」は×)


② ウソをついたら保護されない!「詐術」

制限行為能力者が**「私は普通の大人です」とウソをついて**契約した場合は、取り消す権利を失います。

ウソをついた人まで保護する必要はない、という考え方です。

練習問題

未成年者Aが「親の同意を得ている」とウソをついて土地をBに売った。Aは取り消せるか?

答え→ここをクリック

→ 取り消せない

「同意を得ている」と言うのは「私は普通に契約できる人です」と言うのと同じ。詐術にあたるため、取消権を失います。


③ いつまで取り消せる?─ 取消権の時効

契約が永久に取り消せるとしたら相手方に酷です。そこで、次のどちらか早い方が来たら取り消せなくなります。

・行為能力者になってから 5年
・契約から       20年

「行為能力者になる」とは、未成年者が成年(18歳)になること、または後見・保佐の審判が取り消されることです。

練習問題

未成年者Aが親の同意なしに土地を買った。成年になれば、もう取り消せなくなる?

答え→ここをクリック

→ ×(誤り)

成年になってからさらに5年間は取り消せます。


④ 「法定追認」─ 行動で追認したとみなされる

保護者が契約後に次の3つのどれかをやると、追認したとみなされ、取り消せなくなります。

行動具体例
請求相手方に「家を引き渡して」と要求する
履行こちらから代金を支払う
譲渡手に入れたものを第三者に売る

本人がやった場合は?

未成年者本人が上記3つをやっても、まだ未成年の間は法定追認になりません。でも、成年になってから同じことをやると法定追認になります。

練習問題

未成年者BがAから土地を買った。法定代理人CがこのをDに譲渡した。BはAとの契約を取り消せるか?

答え→ここをクリック

→ 取り消せない

CがDに譲渡した時点で法定追認が成立。契約は完全に有効になります。


⑤ 第三者との関係─ 制限行為能力者は強力に保護される!

場面設定: 制限行為能力者AがBに建物を売却 → BがさらにCに転売。AはBとの契約を取り消してCから建物を取り返せる?

→ 取り返せます!

民法は制限行為能力者を徹底的に保護しています。次の3つすべての場合でも、Aは勝ちます。

Cの状況結果
CがAとBの事情を知らなかった(善意)それでもAが取り返せる
Cが善意で、かつ不注意もなかった(善意無過失)それでもAが取り返せる
Cが登記を備えていたそれでもAが取り返せる

重要語

  • 善意 =「知らない」という意味(善人という意味ではない)
  • 悪意 =「知っている」という意味(悪人という意味ではない)
  • 対抗 =「主張する」という意味

まとめ

相手方が保護者に催告 → 答えなし → 追認 相手方が被保佐人本人に催告 → 答えなし → 取り消し ウソをついたら → 取消権を失う 取り消せる期限は → 行為能力者になってから5年 or 契約から20年 第三者が登記を持っていても → 制限行為能力者が勝つ!

項目未成年者成年被後見人被保佐人
どんな人?18歳未満判断能力を欠く状態判断能力が相当弱い
助けてくれる人親権者など成年後見人保佐人
取り消せる契約同意なしの契約ほぼ全ての契約大きな損をする契約
誰が取り消せる?本人・保護者本人・保護者本人・保護者
嘘をついた場合取り消せなくなる←(左に同じ)←(左に同じ)
取り消しの期限能力者になって5年←(左に同じ)←(左に同じ)
第三者への対抗取り消しを主張できる←(左に同じ)←(左に同じ)

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次