企業で働く多くの人にとって、賞与(ボーナス)は楽しみな収入のひとつ。しかし、経理や総務の担当者にとっては、賞与の計算や控除、届出など実務負担が増える時期でもあります。本記事では、賞与に関わる社会保険料・税金の仕組みや計算方法、実務の流れをわかりやすく解説します。
賞与とは?支給のルールと計算基準
賞与は、基本的に就業規則や賃金規程で支給の有無、計算方法、支給対象者が定められています。通常、年2回(夏・冬)または業績に応じて支給されるケースが一般的です。
重要なポイント
- 支給基準や金額を明文化し、社員に周知すること
- 計算期間を決めておく(例:前年10月~当年3月の業績を夏季賞与に反映)
賞与から控除されるもの
毎月の給与と同様に、社会保険料と所得税が控除されます。ただし、住民税は控除されません(住民税は毎月の給与から均等に控除)。
控除項目は次のとおりです。
✔健康保険料
✔厚生年金保険料
✔子ども・子育て拠出金
✔雇用保険料
✔所得税
賞与と社会保険の関係【標準賞与額とは?】
① 標準賞与額の決定
賞与支給時は、「標準賞与額」という単位で社会保険料を計算します。
計算ルール:
- 1,000円未満は切り捨て
- 健康保険料の上限 → 年度累計 5,730,000円
- 厚生年金保険料の上限 → 1回あたり 1,500,000円
例えば、支給額が 305,500円 なら標準賞与額は 305,000円 です。
注意点
- 賞与が年4回以上ある場合、その賞与は「賃金」として標準報酬月額に含まれます。
② 保険料率と負担割合
社会保険料は、賞与の標準賞与額に保険料率を掛けて計算します。事業主と従業員で 折半負担 です。
保険 | 保険料率 | 従業員負担 |
---|---|---|
健康保険 | 9.98% | 4.99% |
健康保険+介護 | 11.58% | 5.79% |
厚生年金 | 18.30% | 9.15% |
子ども・子育て拠出金 | 0.36% | なし |
例:標準賞与額 305,000円 の場合
- 健康保険(介護なし)→ 305,000 × 9.98% = 30,439円(会社・従業員 各15,219円)
- 厚生年金 → 305,000 × 18.30% = 55,815円(会社・従業員 各27,908円)
③ 賞与支払届の提出
賞与を支給したら、5日以内に「被保険者賞与支払届」を年金事務所へ提出します。
- 提出書類:被保険者賞与支払届
- 提出期限:賞与支払日から5日以内
- 賞与が支給されなかった場合:「賞与不支給報告書」を提出
賞与と雇用保険
雇用保険は、毎月の給与と同様に賞与にも適用されます。控除方法は給与と同じで、賞与額に保険料率(業種ごとに異なる)を掛けて計算します。
納付は労災保険料とともに、年1回(概算・確定保険料の清算時)に行います。
賞与と所得税の源泉徴収
賞与から天引きする所得税は、給与と異なる計算方法を用います。
計算手順
- 賞与額から社会保険料を控除
- 「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を参照
- 税率を掛けて算出
注意点:
- 前月に給与がない場合、または賞与額が前月給与の10倍を超える場合は「月額表」を使用
- 1円未満切り捨て
- 源泉税の納付期限は翌月10日(納期の特例あり)
定額減税の対応(令和6年6月以降)
定額減税分は、支給日が早いものから順に控除します。
賞与と納付期限
最後に、納付期限を整理します。
項目 | 納付期限 |
---|---|
源泉所得税 | 翌月10日 |
社会保険料 | 翌月末 |
例:
- 7月賞与 → 源泉所得税:8月10日、社会保険料:8月31日
- 8月給与 → 源泉所得税:9月10日、社会保険料:8月31日(7月分)
【実務のポイント】経理・総務が押さえるべきチェックリスト
✔就業規則に賞与のルールを明記
✔標準賞与額を正しく計算
✔賞与支払届の提出期限(5日以内)を守る
✔社会保険料・所得税の納付期限をカレンダー管理
✔定額減税対応の確認(令和6年6月以降)
【まとめ】賞与計算は「早めの準備」がカギ
賞与計算は給与計算に比べて頻度が少ない分、手順を忘れがちです。特に、
- 標準賞与額の計算
- 賞与支払届の提出
- 源泉所得税・社会保険料の納付
は、ミスしやすいポイントです。
経理・総務担当者は、チェックリストやスケジュール管理ツールを活用し、効率よく正確な処理を行うことが重要です。
参考になる本としては、以下の書籍は図解も多くておすすめです。