北海道ニセコ。この地名を聞くだけで、雪質の良さや世界有数のスキーリゾートとしてのブランドを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
近年、ニセコは「日本の中の国際都市」とも言えるほど、海外投資家や富裕層観光客に注目されてきました。特に、オーストラリアやシンガポール、香港などのアジア圏からの投資が目立ち、土地価格は東京の高級住宅地に匹敵するレベルにまで上昇しています。
そんな中で発表されたのが、リストグループによるニセコでの別荘地開発計画です。2027年の着工を目指し、すでに土地取得や北海道営業所の開設を進めており、約6万5000㎡の広大な敷地にヴィラタイプの高級別荘を展開するとのこと。さらに、リゾートエリアの一等地における商業施設の整備も構想に含まれています。
一見すると「また大手によるリゾート開発か」と思う方もいるかもしれません。しかし、このニュースをじっくり読み解いていくと、日本のリゾート開発における新しい潮流と、地域との共存に向けた重要な示唆が見えてきます。
リゾート開発の成功条件は“共感”と“共生”
過去、日本のリゾート開発にはいくつかの失敗例があります。高度経済成長期やバブル期における大型リゾート開発は、一時的には賑わったものの、バブル崩壊後にゴーストタウン化した地域も少なくありませんでした。
では、今回のリストグループの取り組みは何が違うのか?
大きなポイントは「農業との融合」です。記事にもある通り、リストはニセコで農業法人「リストファーム」を立ち上げ、地元農家と協力してジャガイモやスイートコーンの栽培を始めています。さらに、ふるさと納税の返礼品としての活用や、将来的なレストラン・カフェ展開も視野に入れているとのこと。
これは単なる“観光資源の開発”ではなく、“地域とともに成長する仕組みづくり”を目指していると言えるでしょう。
観光と農業を結びつけることで、訪れた人に「この土地でしか味わえない体験価値」を提供できる。リゾート開発の成功は、土地のストーリーをどう紡ぐかにかかっています。
外資依存から日本型モデルへ
現在のニセコ市場は、外資の存在感が非常に強いです。豪州資本をはじめ、東南アジアや欧米の企業がホテルやコンドミニアムを建設し、その結果、地元の生活コストが上昇し、地域との摩擦が生まれている現実があります。
その中で、リストグループのような日本企業が“日本人による、日本型リゾート開発モデル”を打ち出すことは非常に意義深いと思います。
ポイントは、単なる土地の転売や建物供給ではなく、「地域との共生」「持続可能な観光」「環境保全」をどう実現するか。記事にも「自然を最大限残した開発を意識」とありますが、これを本気でやり抜けるかどうかが問われます。
ここで大事なのは、「日本らしい価値観」をリゾートの中にどう取り込むかということです。例えば、
- 静けさを楽しむ文化
- 四季を感じる建築設計
- 地産地消の食文化との融合
こうした要素は、外資系企業の大量生産型リゾートではなかなか再現できません。リストがここに本気で取り組めば、ニセコに新たなブランド価値をもたらせるでしょう。
マーケティング視点で見ると…
富裕層のリゾート購入ニーズは、単なる“別荘”ではなく、“第二のライフスタイル拠点”にシフトしています。
特にインバウンド客にとって、ニセコは「冬のスキー」だけでなく、「夏の避暑地」としても注目されています。今回の計画でも「夏場は国内客の訪問も見込む」とある通り、オールシーズン型のリゾート戦略が重要になります。
私が注目したいのは、「農業と宿泊体験の組み合わせ」。これは、欧米の富裕層マーケットで人気の“アグリツーリズモ”の発想に近いものです。
たとえば、
- 別荘の宿泊者がジャガイモやスイートコーンの収穫を体験できる
- リストファーム直送の野菜を使ったレストランで地元シェフの料理を楽しめる
- 子ども向けに「食と自然の教育プログラム」を提供する
こうした体験価値を組み込めば、単なる不動産投資ではなく、「ここで過ごす時間」そのものが商品になります。
課題は“環境と地域”との向き合い方
もちろん、開発に伴う課題も無視できません。
- 大規模な森林伐採による環境への影響
- 地元住民との価格感覚の乖離
- 外部資本による土地買収への不安
こうした問題に対して、リストグループがどれだけオープンに、そして誠実に対応できるかが成功の鍵になります。
記事にある「地元住民との交流」にも注目したいですね。開発企業が一方的にリゾートを作るのではなく、地域住民と一緒にブランドを育てていく。
この姿勢が本物であれば、ニセコ開発は単なる“高級リゾート”ではなく、“地域と共生する未来型モデル”になるかもしれません。
まとめ:ニセコは日本のリゾート開発の試金石
私はこのニュースを読んで、「ニセコが日本型リゾート開発の試金石になる」と感じました。古巣の会社ということで贔屓目に見ているかもしれませんが、内部にいたからこそ関わる人達や北見社長の考えていることが分かります。素晴らしいものになると私は確信しております。また、リストデベロップメント投資・開発事業本部の遊佐知衣さんのように柔軟な考えを持つ若い世代の方が会社をリードするところが、リストグループの強みだと感じてます。
リストグループの挑戦は、ただの別荘地販売ではなく、日本の観光産業・不動産業界にとっての新しいモデルケースです。
- 自然と調和したデザイン
- 農業と観光の融合
- 地域と共に生きる開発姿勢
この3つを軸にした開発が本当に実現できれば、日本のリゾートは“外資依存型”から“持続可能な日本型モデル”へと進化できるでしょう。
2027年の着工まで、あと2年。このプロジェクトがどのように進化するのか、今後も注目していきたいと思います。