【アップサイクル革命】コーヒーかすがクラフトビールに生まれ変わる――「梅田木立」に見る未来の街づくりと企業ブランディング戦略

クラフトビールというのは、単なる嗜好品ではなく、その土地や人の「思想」を映す鏡だと思う。
私自身、市原市で友人と一緒に株式会社ICHIHARA CONNECTIONを立ち上げ、「ICHIHARA ALE」という地域発のクラフトビールを手がけている。乾杯をきっかけに、地域の人たちが繋がりを持てる“市原の味”をつくりたい――そんな想いで始めました。

だからこそ、今回のニュース――大阪梅田ツインタワーズ・サウスで、コーヒー抽出後の豆かすを再利用して誕生したクラフトビール「梅田木立(うめだこだち)」の取り組みには強く惹かれたました。

単なるアップサイクルの事例ではなく、「廃棄物に新たな命を吹き込むことで、人と街をつなぐ」このプロジェクトには、クラフトビールづくりの根幹にある“循環と共創の哲学”が感じられます。

地域ごとに違う素材や物語をもとに、一杯のビールが人の心を動かす。
これは市原でも大阪でも変わらない。
そんな想いを込めて、今日は「梅田木立」プロジェクトを、取り上げてみました。

目次

「廃棄物」から「誇り」へ。大阪梅田ツインタワーズ・サウスが見せた新しい循環のかたち

大阪梅田ツインタワーズ・サウスで生まれたクラフトビール「梅田木立(うめだこだち)」が、また一つ、時代の象徴として注目を集めている。
材料はなんと、コーヒーを淹れた後に残る“豆かす”。

阪急阪神不動産、CRUST JAPAN、日本ビジネスシステムズ、そして京都芸術大学という4者の連携によって、この“廃棄物”がビールへとアップサイクルされたのだ。

ここにあるのは単なる「SDGsの取り組み」ではないと思います。
それは、「都市」と「企業」と「学生」と「クリエイティブ」の協働によって生まれる“誇りの循環”であると感じます。


SDGsを「掲げる」から「体験する」へ

今、多くの企業が「SDGsへの貢献」を掲げています。
ですが、消費者も社員も、掲げられたスローガンだけでは心が動きません。

重要なのは、それを「体験」できるかどうかです。

この「梅田木立」プロジェクトでは、まさにその「体験」が設計されています。
オフィスビルで淹れたコーヒーが、再びそのビルの社員のもとにクラフトビールとして戻ってくる。
これは、資源の循環だけでなく、“想いの循環”でもあります。

自分たちが日々働く場所で、自分たちの手から生まれたビールを味わう。
そこには「私たちは環境に貢献している」という誇りが生まれます。
この“感情的満足”こそ、SDGsを「形だけの活動」から「文化」へと昇華させる原動力になります。


企業ブランドの本質は「共創」にある

阪急阪神不動産という老舗デベロッパー、
CRUST JAPANというフードテック企業、
京都芸術大学という創造の拠点、
そしてJBS(日本ビジネスシステムズ)というIT企業。

この4者が交わる点にこそ、現代のブランド戦略のヒントがある。

もはや「企業対顧客」という関係ではなく、
「企業 × 学生 × 社員 × 社会」が共に価値をつくる時代。

たとえば京都芸術大学の学生たちがデザインしたラベル。
彼らは単なる受託者ではなく、“社会実装に参加するアーティスト”です。
学生にとっては学びの場であり、企業にとっては新鮮な視点を得るチャンス。

こうした産学連携の本質は、教育やCSRではなく、共創(co-creation)によるブランドの深化にあります。


「社員限定ビール」という戦略的クローズドマーケティング

興味深いのは、このビールが一般販売されないという点です。

一見、もったいないように見えるが、実はこれが巧みなブランディング戦略。
“社員限定”というクローズドな空間で展開することで、
このプロジェクトは「特別な体験」として社内文化に深く根付く。

つまり、社内マーケティング(インターナルブランディング)の一環としての役割を果たしています。

社員が「自分の会社がこんなことをしている」と誇りを持てば、
その口コミは社外に自然と広がっていきます。
これこそ“共感資本主義”の時代における最も自然なプロモーション手法です。


アップサイクルがもたらす「都市の物語」

アップサイクルとは、単に“再利用”ではなく、
「廃棄されるはずのものに新たな意味を与えること」だ。

この発想を都市全体に広げていけば、街そのものが“再生する物語”を持つようになる。

大阪梅田という日本屈指のビジネス街が、
今や“循環の象徴”として新しい文化を発信しています。

もしこれを「東京・丸の内」や「横浜・みなとみらい」などの他都市にも展開できれば、
日本のオフィス街が「消費の場」から「再生の場」へと変わる可能性があります。

そしてそこに関わる人々が、環境や地域、アートや技術を通じて「物語の一部」となります。
それが、これからの街づくりのキーワードになると思います。


「梅田木立」が示す、これからの企業のあるべき姿

このプロジェクトの素晴らしさは、派手なPRよりも、日常の中で静かに持続する美しさにあります。
限定空間で、少量生産で、しかし確実に社員の心を温めていく。

これはまるで、オフィス街の真ん中に小さく根付いた“木立”のようです。

そして、その木立の下で人が語らい、笑い、アイデアを生み出す。
そこに、未来の企業の姿があります。


結びに――アップサイクルは「人の心を豊かにする技術」

コーヒーかすをビールに変える技術は確かに素晴らしい。
だがもっと重要なのは、そのプロセスが人の意識を変える力を持っていることです。

「もったいない」から「ありがとう」へ。
「廃棄」から「再生」へ。
「義務感」から「誇り」へ。

アップサイクルとは、素材だけでなく、人の心の在り方をアップデートする試みでもあります。

「梅田木立」は、その象徴です。
そしてこの取り組みが、未来の街づくりや企業経営のヒントとして、
多くの人に静かに届くことを願いたいです。

出典:阪急阪神不動産株式会社  https://www.hhp.co.jp/news/2025/10/000838.html

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