不動産ポータルサイト大手のアットホームが2025年7月 全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向を発表しました。それによると賃貸家賃が過去最高を記録したということです。細かく見ていきましょう。
1. 家賃の「静かなインフレ」が続く背景
2025年7月の調査結果を見ると、東京23区・札幌・京都・大阪・福岡といった主要都市で、マンションの募集家賃が過去最高値を更新しました。特にシングル向け、カップル向け、ファミリー向けといった全てのターゲット層で上昇傾向が続いていることは注目に値します。
ここで重要なのは、この上昇が「一時的なもの」ではなく、2015年1月を起点とする長期的な上昇トレンドの延長線上にあるという点です。つまり、これは「静かなインフレ」であり、構造的な変化と考えるべきです。
2. なぜ賃料は上がり続けるのか?3つの要因
今回の調査を踏まえて、3つの要因を挙げます。
(1)建築コストの上昇
建築資材や人件費の高騰はここ数年続いています。特に、ゼロカーボン化に伴う新基準や省エネ性能の向上は建築コストに直結しています。結果として、新築マンションの賃料は当然高くなり、既存物件も「市場連動」で値上がりしていく構造です。
(2)人口動態の二極化
地方の人口減少が進む一方で、都市部への集中は止まりません。テレワーク定着で地方移住が話題になった時期もありましたが、結局「便利さ」や「教育環境」を求めて都市に戻る流れは強い。東京、大阪、福岡といった都市は、むしろ選ばれ続けています。
(3)海外資本と富裕層の影響
東京・大阪・福岡などは、海外投資家にとって依然として「割安」に映ります。円安基調も手伝って、投資目的の購入が進み、それが賃貸市場にも波及。特に短期貸しや外国人需要を見込んだ物件は、高めの家賃設定が容易になっています。
3. エリア別に見る「特色ある動き」
今回のデータから見えてくるのは、全国一律の上昇ではなく、エリアごとの特色ある値動きです。
- 東京23区
シングル向けが14カ月連続最高値。これは若年層や単身赴任者だけでなく、DINKs層や高所得単身層の増加が影響しています。特に都心の利便性とセキュリティを求める層は、家賃の高さを「安全・安心への投資」と捉えています。 - 札幌市
観光需要と再開発の影響で家賃は上昇傾向。雪対策や断熱性能の高い物件は人気で、リノベーション賃貸が注目されています。 - 大阪市・福岡市
どちらも再開発が進み、利便性が高いエリアでの賃料上昇が顕著。福岡は九州のハブとして、企業進出と共に人口増加が続き、若い世代の「東京より手が届く都市」という評価も後押ししています。 - 京都市
インバウンド回復で短期貸し需要が強く、その影響が通常の賃貸市場にも波及。特にファミリータイプは供給不足で価格上昇が止まりません。
4. 借り手はどう動くべきか?オーナーはどう備えるべきか?
この状況で「借りる側」はどうするか。私の提案は2つです。
(1)早めの決断が吉
上昇トレンドが続く中、「もう少し下がるかも」という期待は危険です。良い物件ほど早く決まります。特に都心部では、予算を少し上げてでも立地重視を選ぶ方が、生活コスト全体で見れば得策です。
(2)条件交渉より「長期安定」
賃料交渉は難しくなっています。それよりも、長期契約で安定を得る交渉が現実的。更新料の有無や長期入居の割引を確認することがポイントです。
一方で「オーナー側」は、賃料設定を強気にしすぎない慎重さが求められます。理由は、物価高騰で可処分所得が減る中、限界点を超えた賃料は空室リスクを高めるからです。
ただ、人気エリア・築浅・設備充実物件であれば、強気の賃料設定は有効。「募集開始から2週間で決まらなければ再調整」というルールを持つのがおすすめです。
5. 長期的視点で考える「日本の住宅市場の未来」
今回の家賃上昇は、短期的なトレンドではなく、都市部の価値が再評価されている現象だと感じます。
AIやDXで働き方が変わっても、人が集まる場所は変わらない。「教育」「医療」「文化」が集まる都市は、やはり魅力的です。
ただし、家賃負担が若年層や子育て世帯を圧迫する現実も見逃せません。これが進めば、結婚や出産をためらう世帯が増え、さらに人口減少に拍車がかかる可能性があります。
国や自治体は、単なる補助金ではなく、住宅の質と供給の最適化を本気で考える時期に来ています。
まとめ:家賃上昇は「都市の価値」への価格シグナル
今回のデータは、都市部で「暮らす価値」に対する価格シグナルだと言えます。借り手は早めの決断、オーナーは適切な価格戦略。そして、国レベルでは、都市の成長と生活コストのバランスをどう取るかが問われています。
あなたは、今の家賃上昇をどう感じますか?
コメント欄でぜひ意見を聞かせてください。
出典:アットホーム株式会社 https://athome-inc.jp/news/data/market/chintai-yachin-202507/