外国人による土地取得規制は必要か?GATSの壁と日本の安全保障を「感情と合理性」から読み解く

日本で長らく議論されてきた「外国人による土地取得問題」。
とくに 自衛隊基地周辺や水源地など、国家インフラに近い土地が外国資本に買収されることへの不安 は、国民感情として非常に理解できます。

ただ一方で、政府・不動産業界・国際協定が複雑に絡み合い、単純に「外国人NG」という方向には進めない現状があります。

今回は、不動産業者としての現場感、心理学的な視点、哲学的なバランス感覚、そしてマーケターとしての「国民がいま本当に気にしていること」を踏まえて、最新ニュースを丁寧に読み解いていきます。


目次

外国人による土地取得は本当に規制できないのか?

結論から言うと、

日本は「外国人だから」という理由で不動産取得を禁止・制限することが難しい。

その最大の理由が、

▼ GATS(サービスの貿易に関する一般協定)の“内外無差別原則”

日本はGATS締結の際に、
本来なら「例外」として留保できた土地に関する規制を留保しなかった。

その結果、

外国人を規制=日本人にも同じ規制をかけなければならない

というルールが成立しています。

つまり、外国人向けの規制を作ろうとすると、日本国内の不動産取引が全体的に硬直し、不動産市場そのものの流動性が低下してしまう。

これは不動産業界としては強く反対するわけです。


「安全保障上のリスク」は感情と合理性の間で揺れている

心理学的に、私たちは「見えない不安」を実在以上に大きく感じます。

・基地の近く
・水源地
・国境離島

こういった場所が買われると、「何か裏があるのでは?」という疑念が自然に湧きます。

しかし、記事にもある通り、

外国人による土地取得が安全保障上の問題を起こしたという“具体的な事実”は確認されていない。

ここが非常に大きなポイントです。

“リスクは0ではないが、問題が実際には起きていない”

法律を作るには、必ず「立法事実」が必要です。
これは哲学的に言えば、「実体のない恐怖に対してどこまで国家が介入すべきか」という問いでもあります。


とはいえ「感情面のケア」が政策には不可欠

私は不動産に関わる立場として、
国民の不安がこれだけ強いなら、政治が何も動かないのは逆に危険 だと感じます。

不動産政策には合理性だけでなく、

  • 住民の安心
  • 社会心理の安定
  • 不信感の払拭

といった「非経済的価値」を重視する必要があります。

マーケティングの世界でも同じで、人は「正しい情報」よりも「安心感」に動かされます。

その意味でも、政府が調査を進めること自体は、中長期的には国民の信頼につながります。


重要土地等調査法の限界と今後の焦点

令和3年に制定された「重要土地等調査法」は、

  • 防衛施設・原発周辺1km圏内
  • 国境離島

など合計585か所での調査を行っています。

ただしこの法律は、

▼ 取得を止めることはできない
▼ 利用が不適切な場合に「中止を勧告・命令」できるだけ
▼ 規制としては“未完成”

という限界があります。

本質的な問題に手をつけられていないため、

「取得そのものに踏み込むべきでは?」

という声が、政治サイドで再び強まっているわけです。


自民党・維新は、来年の通常国会で規制強化へ

連立合意書の中で、

重要土地等調査法の5年後見直し(2029年度)を待たずに、
来年通常国会で外国人の土地取得規制を進める

と明言されています。

つまり政治サイドは、

  • 国民感情の受け止め
  • 安全保障リスクへの予防
  • 国際協定との整合性
  • 不動産市場への影響

これを同時に成立させる「解」の模索に踏み出したと言えます。

ここから数ヶ月はかなり注目すべき動きが出るでしょう。


結論:必要なのは「規制」よりも“透明性”と“対話”

私は不動産業に長く携わっていますが、現実には、

  • 外国資本だから危険
  • 日本人だから安全

という単純な区分は成り立ちません。

日本人が取得しても不適切利用は起こり得ますし、
外国人が所有しても何の問題も起きないケースがほとんどです。

したがって、今の日本に必要なのは、


▼ ①透明性を高めること

所有者の国籍を把握し、危険があるなら行政が早期に把握できる体制。


▼ ②「利用目的」の監視

所有行為そのものよりも、利用実態を明確にする仕組み。


▼ ③国際協定と調和した“賢い規制”

国際社会と対立しない、持続可能な制度設計。


▼ ④国民への丁寧な説明

不安をただ煽るのではなく「正しく安心できる未来」を共有する。


不動産は「国土」という最も大切な資源です。
しかし同時に、過度な規制は市場を冷やし、日本の活力を奪ってしまいます。

安全と自由。
国益と国際協調。
不安と合理性。

このバランスの中で、日本がどんな未来を作るのか。

次の通常国会は、日本の不動産政策が大きく動き出す節目となる可能性が高いでしょう。

出典:産経新聞 https://www.sankei.com/article/20251125-76QBLHTGGJMVNEBO3MVOIZAUJE/

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次