2025年10月3日、海外投資家向けに不動産販売を展開するプロパティアクセス株式会社が、ロカマネジメント株式会社および一般社団法人不動産M&A診断士協会と包括的業務提携を締結したというニュースが発表されました。
この提携の背景には、日本の不動産市場における「出口戦略の多様化」と「海外投資家の安心確保」という2つの大きな潮流があります。今回のニュースを整理しつつ、不動産会社の視点から未来を展望してみたいと思います。
不動産M&Aとは何か?従来の不動産売買との違い
まず「不動産M&A」という言葉に馴染みが薄い方のために整理しておきましょう。
一般的な不動産取引では、土地や建物といった「物件そのもの」を売買します。
一方、不動産M&Aは、物件を所有する「法人」を売買の対象とする仕組みです。
つまり株式や持分を譲渡することで、その法人が保有している不動産を「間接的に」承継できるのです。
このスキームにはいくつかのメリットがあります。
- 契約関係や金融機関との与信をそのまま維持できる
- 法人を清算せずに済むため、税務上の優遇を受けられる可能性がある
- 相続や事業承継の一環として利用できる
ただし、ここには法務・税務・会計の高度な知識が求められるため、単なる不動産売買以上に専門性が必要となります。
不動産M&Aが抱える課題
これまでの日本のM&A仲介市場は、財務畑出身者や営業力重視のプレイヤーが多くを占めてきました。その結果、不動産そのものの評価や取引慣行への理解が不足し、売主・買主双方に不利益が生じるケースも見られます。
「不動産を理解していない仲介者による不動産M&A」では、どうしても歪みが生じてしまうのです。
ここで重要なのは、不動産M&Aは不動産を核に据えたM&Aであるという点です。
不動産の価値評価・地域事情・流通慣行に精通する「不動産業者」が主体的に関わり、さらに税務・法務の専門家と連携してこそ、健全で透明性の高い市場が実現します。
今回の提携が意味するもの
この課題を受けて、不動産M&A市場に「新しい役割」を根付かせようとする動きが、今回の業務提携です。
- 不動産M&A診断士協会
不動産M&Aに特化した専門人材「不動産M&A診断士」を育成し、業界に送り出す。 - ロカマネジメント
税務・法務・不動産評価の面で診断士をバックアップし、さらに専門家ネットワークを提供。 - プロパティアクセス
これらの仕組みを活用し、海外投資家へ「現物不動産」だけでなく「不動産を抱える法人」も紹介。
この三者が連携することで、不動産M&A市場における「公平性・安全性・専門性」が担保され、海外投資家も安心して日本市場に参入できる環境が整うといえます。
海外投資家にとってのメリット
海外投資家にとって、日本不動産は依然として魅力的な投資対象です。
- 円安による相対的な割安感
- インフラ整備や観光需要の拡大
- 政治的な安定性
こうした追い風の中で、さらに「法人ごと投資できる」という選択肢が加わることは大きな魅力です。
特に法人形態での投資は、税務・法務上の整理が明確になっている点で安心感があります。
この仕組みが普及すれば、日本不動産市場の信頼性が一段と高まり、長期的かつ持続的な成長につながるでしょう。
不動産業界に求められる変化
今回の提携は、日本の不動産業界に対しても示唆を与えています。
- 「売る」から「承継・組み替える」時代へ
これまで出口戦略といえば単純な売却が主流でしたが、今後は法人スキームを含めた多様な選択肢が求められます。 - 専門家同士の連携が必須
不動産業者、税理士、弁護士、会計士が「チーム」として動く仕組みが必要になります。 - 不動産M&A診断士の役割拡大
今後は診断士が投資家と市場をつなぐ「新しいハブ」となるでしょう。
まとめ:不動産M&Aは日本市場の未来を拓く
今回のニュースは単なる企業提携にとどまらず、日本不動産市場の新たな方向性を示しています。
- 不動産M&Aというスキームがより一般化する
- 海外投資家が安心して参入できる環境が整う
- 不動産業界における専門家連携が深化する
私はこの流れを「日本不動産市場の成熟化」と捉えています。
単なる物件の売買から、より構造的・戦略的な取引へ。
これからの時代、我々不動産業者は「地域を知る専門家」としての強みを活かしつつ、法務・税務のプロと手を組み、投資家と社会にとって公平で安心できる市場を築いていくことが求められるでしょう。
今回の提携は、その未来を先取りする大きな一歩なのです。

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