住宅ローン返済額が「月収の3割以上」22% 金利上昇時代のマインドセット

住宅ローン返済額が「月収の3割以上」22% 金利上昇時代のマインドセットを考える

不動産情報サービスのLIFULL(ライフル)が発表した最新の調査によると、住宅ローンの返済負担が「世帯月収の3割以上」という人が21.7%に達したそうです。半年前の調査から3.6ポイント増加という数字は、決して小さくありません。

さらに、「ローンの返済が不安」という人は24.7%と、こちらも増加傾向。背景には、住宅価格の高騰と、金利上昇という二重のプレッシャーがあります。都内の新築マンションの平均価格は、ついに1億円超え。低金利時代を前提にした借り入れが、今、静かに重くのしかかっているのです。

今日は、このニュースを「数字」だけでなく、「心理」と「今後の行動戦略」という視点で解説していきます。


目次

3割の壁はどこから来たのか?

住宅ローンの返済負担が「月収の3割以内」という目安は、昔から存在しています。これは金融機関が融資を判断する際の返済負担率(Debt-to-Income Ratio)に基づいています。
なぜ3割なのか?
人間の生活費には、住居費以外にも固定的にかかる支出があります。教育費、保険料、通信費、食費…。これらを考えると、手取りの3割以上をローンに充てると、可処分所得が圧迫され、家計に余裕がなくなる、というのが理由です。

しかし、現実を見ると「3割以上」という世帯が2割を超えている。しかも、「もっと借入額を減らせばよかった」と後悔する人が39.1%(3割以上負担の世帯)というのは、非常に示唆的です。


人はなぜ借りすぎてしまうのか?

ここで心理学の視点を入れましょう。人が住宅を購入する際、冷静な計算よりも強く働くのは感情です。

  • 「今買わないともっと高くなる」という恐怖(FOMO:Fear of Missing Out)
  • 「一生に一度の買い物」という特別感
  • 「金利が低いうちに」という安心感

これらが組み合わさると、判断が緩くなり、「少し背伸びすればいける」という思考に陥ります。
ここにさらに、近年の超低金利時代
が加わったことで、「返済額が安いから、もう少し高い物件を」という意思決定が広がりました。

しかし、金利が上がれば話は別。変動金利を選んだ人は特に、返済額の上昇リスクを肌で感じ始めています。


金利上昇で「固定派」シフトは健全か?

調査によると、変動金利を選んだ人は64.1%と依然として多いですが、固定金利型を選ぶ割合は増加傾向にあります。これは、今後の金利上昇を見越した合理的な動きです。

ただ、ここで重要なのは、「固定にすれば安心」ではないということ。固定金利は、変動金利よりも金利が高めに設定されるため、初期の返済負担はむしろ増えます
本当に安心を得たいなら、借入額を抑える、繰り上げ返済を計画する、投資と貯蓄をバランスよく行う、この3点が不可欠です。


39.3%の人が「特に対策なし」という現実

驚くべきは、金利上昇リスクに対し、39.3%の人が「特に対策をしていない」というデータです。
一方で、対策をしている人の中では、

  • 新NISA・iDeCoでの資産形成(33.8%)
  • 預貯金(30.1%)
  • 繰り上げ返済(16.1%)
    が多いという結果でした。

ここでも心理が見えます。人は、「将来の不確実なリスク」よりも、「今の生活の快適さ」を優先する傾向があります。これは時間選好バイアスと呼ばれるもの。将来より今を重視する傾向は、人間の本能とも言えます。


今、私たちが取るべきアクション

では、この状況で何をすべきでしょうか?
僕は3つのポイントを提案します。

① 借入額の再点検をする
特に変動金利の方は、金利上昇局面を考慮したシミュレーションを必ず実施してください。「今の返済額」ではなく、「1%上がったとき」「2%上がったとき」を想定することが大切です。

② 金利上昇に備えたキャッシュフロー戦略を立てる
繰り上げ返済も一つの方法ですが、流動性を確保することも重要です。預貯金と投資のバランスを考えましょう。特にiDeCoや新NISAを活用して、長期的な資産形成を同時に進めるのが賢明です。

③「今が買い時」思考から脱却する
住宅は資産ですが、同時にライフスタイルを支える「負債」でもあります。市場の熱に飲まれず、「本当に必要な家か」「返済に余裕があるか」を自分に問いかけてください。


中長期的な住宅市場の見通し

最後に、住宅市場全体の話をしましょう。金利上昇と固定金利志向が強まると、借り入れ可能額が減り、購買力が下がるため、中長期的には価格上昇が鈍化する可能性があります
ただし、都心の一等地や資産性の高いエリアは別。むしろ、こうした局面で二極化が進むと考えています。


まとめ:不安を「知恵」に変える時代

ニュースを読むと、不安になる方も多いでしょう。でも、不安は「知識と行動」で武器にできます。
金利は私たちがコントロールできません。しかし、借入額の調整、資産形成、ライフプランの再設計は、私たち自身ができることです。

「買った瞬間にゴール」ではなく、「買った後の20年、30年をどう生きるか」をデザインすること。それが、これからの住宅購入の新常識になるでしょう。

その他もニュースも是非以下のリンクから合わせてご覧にいただけると嬉しいです。

出典:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC170TP0X10C25A8000000/?utm_source=newsshowcase&utm_medium=gnews&utm_campaign=CDAQwJmN8qbysrvJARijnbWw04XhupQBKioIACIQux70lvxu4FGD-5PeOmBqhSoUCAoiELse9Jb8buBRg_uT3jpgaoU&utm_content=rundown


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