2025年9月19日、霞ヶ関キャピタル株式会社が大東建託株式会社と共に、ドバイでの不動産開発事業に本格参入するというニュースが発表されました。
一見すると「海外進出の一例」に見えるかもしれませんが、今回の動きは日本の不動産業界にとって大きな転換点になる可能性を秘めています。
ドバイの「人口600万人計画」と不動産需要
背景には、ドバイ政府が打ち出した「Dubai Urban Master Plan 2040」があります。
現在約350万人の人口を、2040年までに590万人規模へ拡大させるという壮大な計画です。
人口増加は住宅需要の拡大と直結します。加えて、治安の良さや国際都市としての利便性、そして欧米主要都市に比べて相対的に割安な住宅価格が、世界中の投資家や移住希望者を惹きつけています。
この点で、ドバイは「投資先」としても「居住地」としても魅力が高まり続けている市場なのです。
霞ヶ関キャピタルの戦略転換
霞ヶ関キャピタルは2022年にドバイ市場へ参入。当初は現地の開発物件を取得してリノベーションし、再販する「キャピタルゲイン型」のモデルを展開してきました。
それが今回、現地での知見やネットワークを積み上げた結果、いよいよ「自社主導の開発型ビジネス」へと進化する段階に入りました。
これはいわば「投資家としての立場」から「開発者としての立場」への変化です。より主体的にプロジェクトを動かし、安定的な利益を得るビジネスモデルへと移行していく。その最初の大きなパートナーが大東建託です。
大東建託との協業が意味するもの
大東建託といえば、日本では賃貸住宅建設の最大手。弊社もお取引させてもらっておりますが、どの物件もクオリティが高くおすすめのものばかりです。地方にも物件を手掛け、全国にわたる施工・管理・運営の実績は群を抜いています。
一方、霞ヶ関キャピタルは比較的新しい会社でありながら、物流施設やホテル、ヘルスケア施設などを手がける柔軟な開発力を武器に急成長してきました。
両者の強みを合わせることで、次のような補完関係が生まれます。
- 霞ヶ関キャピタル … 海外事業で培ったネットワーク、スピード感、柔軟な企画力
- 大東建託 … 豊富な資金力、設計・販売・管理のノウハウ、ブランド力
この組み合わせは、海外市場において「日本品質の不動産開発」を展開するうえで非常に理にかなっています。
「日本品質」というキーワード
ここで注目すべきは「日本品質」という言葉です。
海外不動産市場において、日本の建築や街づくりに対する信頼感は想像以上に大きいものがあります。耐震性、施工精度、管理体制――いずれも丁寧さと信頼性に裏打ちされた評価があるのです。
一方で、グローバル市場では「スピード」と「資本効率」も求められます。ドバイは成長の速度が速く、国際的な競争が激しい市場です。
その中で日本企業が存在感を発揮するためには、日本ならではの強みを保ちつつ、現地のスピード感にも適応する必要があります。
霞ヶ関キャピタルと大東建託の協業は、そのバランスを実現する試みだといえるでしょう。
不動産業から見たポイント
不動産業の立場から今回の動きを整理すると、以下の点が重要です。
- 人口増加が裏付ける確実な需要
ドバイ政府の明確な計画と政策が背景にあるため、長期的な需要増加は期待できます。 - 再販ビジネスから開発型へ移行
キャピタルゲイン狙いから、より安定的な開発利益へシフト。リスクは大きいものの、成功すれば収益の安定性は高まります。 - 日本大手との提携による安心感
大東建託の参入は、日本国内の投資家にとって心理的な安心材料となります。「信頼できるブランドが関与している」という点は見逃せません。
グローバル市場への足掛かり
今回のプロジェクト「Emerald Hills」は第一号案件に過ぎません。
霞ヶ関キャピタルは、今後も分譲マンション、戸建て、賃貸住宅、オフィスビルなど多様なプロジェクトを展開する意向を示しています。
ここで築かれる「ドバイにおける日本品質の不動産開発プラットフォーム」は、将来的にアジアや欧米への展開にもつながる可能性を秘めています。
つまり、ドバイは単なる市場ではなく「世界へ打って出るための踏み台」ともいえるのです。
哲学から見た意義
哲学を学んだ者として感じるのは、「市場拡大」という数字の話を超えた意義です。
企業が海外に挑戦することは、単に利益を追うだけではなく、「自らの価値を世界に問う営み」でもあります。
日本の不動産業は、国内人口減少という逆風に直面しています。
そのなかで「外へ出る」という選択肢は避けられません。
しかし、海外展開は「利益のための逃避」ではなく、「自分たちの強みをどう社会に還元するか」という問いへの答えであるべきだと思います。
霞ヶ関キャピタルと大東建託の取り組みは、その問いに対する一つの挑戦として注目に値します。
まとめ
今回のニュースは、単なる企業提携ではなく、日本の不動産業が新たなステージへ進む象徴的な一歩です。
「日本品質」を武器に、世界の成長市場へ挑む姿勢は、国内の投資家にとっても大きな示唆を与えてくれます。
もちろん、海外開発にはリスクもあります。為替変動、法制度の違い、文化の違い――課題は山積みです。
しかし、それらを一つひとつ乗り越えた先に、真にグローバルに通用する「日本発の不動産ブランド」が生まれるのではないでしょうか。
今回のドバイ進出が、その未来への第一歩になることを期待しています。

出典:霞ヶ丘キャピタル株式会社 https://ssl4.eir-parts.net/doc/3498/tdnet/2688827/00.pdf