2025年に入り、日本の不動産市場は大きな転換点を迎えています。
人口減少、新築着工数の低下、住宅ストックの増大——。
この流れの中で、建築士の方々が今まで当たり前とされてきたキャリアパスをそのまま歩むのが難しくなりつつあります。
そんな時代に登場した「建築士の独立前相談窓口」。
これは、住宅診断(ホームインスペクション)を副業・兼業として始めたい建築士のための無料窓口で、すでに多くの相談が殺到しているとのことです。
今回のニュースは、不動産業に携わる私にとっても非常に示唆的でした。
なぜなら、中古住宅市場がこれから確実に伸びていく日本において、ホームインスペクターという職能は、まさに「時代の要請」に応える仕事だからです。
この記事では、建築士を取り巻く環境変化と、ホームインスペクションがなぜこれほど注目されているのか、そしてこれからの建築士のキャリアについて、専門家としての視点から解説していきます。
なぜ建築士はキャリアに不安を抱えているのか?
日本ではすでに 9万以上の建築士事務所 が存在し、その数はコンビニより多いと言われています。
高度経済成長期〜2000年代の「新築需要のピーク」を背景に、建築士は住宅産業の花形でした。
しかし、近年はその構造が大きく変わりつつあります。
- 新築着工数は年々減少
- 空き家は増加し続ける
- ストック型社会へと移行
- 大手メーカーの新築需要も頭打ち
つまり、「新築」を中心にキャリアを組み立てることが難しい時代へ突入したのです。
一方で人は住まいを必要とし続けます。
ただそれが 新築から中古へ。
そして、中古住宅において欠かせないのが「住宅診断」という第三者チェックです。
ホームインスペクターという新しい専門職の価値
ホームインスペクションは、建物の状態を第三者が公平に調査する仕事です。
欧米ではすでに不動産売買時に必須となっていますが、日本はようやく本格普及の段階に入りました。
さくら事務所が開設した「独立前相談窓口」には、以下のような質問が寄せられているそうです。
- 自分の地域ではどれくらい稼げるのか?
- 活動開始までの準備は?
- 機材費はどれくらい?
- そもそも未経験でもできるのか?
これを見る限り、建築士の方々が抱える不安はとてもリアルです。しかし同時に、そこに“時代の需要”があることも伝わってきます。
■ ホームインスペクターが建築士に向いている3つの理由
1. 新しい収入源として安定しやすい
新築が減っても、中古住宅の流通量は増え続けています。
売買時に診断を希望する買主・売主は年々増えているため、
- 副業として月5〜15万円
- 独立すれば月30〜80万円
といったモデルも十分現実的です。
2. 「見る目」が飛躍的に鍛えられる
中古住宅は一つとして同じ状態のものはありません。
診断経験を重ねるほど「建物のクセを読む力」が身につき、建築士としてのスキルも向上します。
3. 確実に成長する市場に参入できる
国の方針は完全に「ストック型社会」へ舵を切っています。
市場背景的にも、ホームインスペクションは今後さらに需要が伸びる仕事です。
「独立前相談窓口」が提供する価値
さくら事務所の強みは、日本で最も早くから住宅診断を手がけてきた実績です。
累計74,000組を超える相談実績があるため、現場で本当に必要とされるスキルや働き方に精通しています。
今回の窓口で提供される内容は、まさに“独立準備のすべて”。
- 収入モデルの提示
- 活動開始までのロードマップ
- 報酬体系・働き方の説明
- 研修制度
- 機材の案内
- 既存インスペクターとの面談
未経験でも安心してスタートできる仕組みが整えられています。
中古住宅市場が伸びることは、日本全体にメリットがある
私が特に共感したのは、
「住宅を社会インフラとして次世代へ残す」という理念です。
中古住宅が安心して取引できるようになれば、
- 空き家問題が緩和される
- 住宅の長寿命化が進む
- 良質なストックが増える
- 地域の資産価値が維持される
という社会的メリットが生まれます。
そして何より、ホームインスペクターとして働く建築士の方も、
“時代に必要とされる専門家”としての誇りを持てるのではないでしょうか。
経営者として感じること:キャリアは「守る」より「広げる」時代へ
私はこれまで不動産業・不動産コンサル・飲食業など複数の事業を経験してきました。
時代が変わる中で強く感じるのは、
キャリアは守るほど縮み、広げるほど未来が開けるということです。
ホームインスペクションは、建築士という専門職の価値を広げる仕事です。
- 年齢に左右されにくい
- 独立しやすい
- 副業としても可能
- 社会から必要とされ続ける
- 需要が伸びる市場にアクセスできる
これだけ条件が揃っている仕事は、実は多くありません。
最後に:プロフェッショナルの“セカンドキャリア”を応援したい
今回の相談窓口の取り組みは、建築士だけでなく、日本の住宅の未来にとっても大きな一歩だと思います。
新築中心の時代が終わり、ストック活用の時代へ。
そこに必要とされるのは、確かな目で住宅の価値を見極め、買主・売主双方に安心を提供できるプロフェッショナルです。
建築士の方が自身のキャリアを広げ、持続可能な働き方を実現するための選択肢として、ホームインスペクションは非常に有望です。
これから独立を考えている建築士の方、
副業で新しい収入源を作りたい方、
建物を見る目を鍛えたい方——
そうした皆さんにとって、今回の窓口は大いに価値のある第一歩になるでしょう。
時代の変化は、チャンスの増加でもあります。
自分の専門性を社会のために活かす新しいフィールドとして、ホームインスペクションが今、確かな存在感を放ち始めています。

