長野県白馬村がいま注目を集めています。その理由は「第二のニセコ化」とも言われる急速な変化。
スキーリゾートとして世界的に有名になった北海道のニセコは、外国資本や投資家の流入により地価が高騰、観光地としてのブランドを確立しました。しかし同時に、地元住民の生活環境が悪化し、文化やコミュニティの分断が進んだという現実もあります。
白馬村も同じ道をたどるのでしょうか?それとも違う未来を描けるのでしょうか?
この記事では、ニュースの背景と課題、そして希望の兆しを経営者の視点から掘り下げます。
■ 白馬村で何が起きているのか?
2015年以降、白馬村には外国人観光客と投資家が増加しました。特に北城地区では、地価が10年で約2倍に。別荘需要が急増し、民泊や高級コンドミニアムが建ち並びます。
一見、地域にお金が落ちる「良いニュース」に見えますが、その裏で深刻な問題が進行しています。
- 地価・家賃の高騰:若者や子育て世代が白馬に住めなくなり、周辺地域に転出。
- 人手不足:観光シーズンでも飲食店や宿泊施設が「人がいない」ため臨時休業。
- 後継者不足:地元の老舗旅館が廃業。地域の歴史や文化を守る担い手が減少。
- 空き家の外国資本買収:短期的な投資対象化により、コミュニティが希薄に。
このままでは「訪れる人と住む人の分断」が進み、観光地としての本当の魅力が失われかねません。
■ インバウンド依存からの脱却──「From P」の挑戦
そんな中、ひときわ光るニュースがあります。
創業38年の家族経営ペンションを継いだ有限会社ぴー坊の三代目、大塚栄青さんが立ち上げたグランピング&サウナ施設「From P」。
この施設はインバウンドに頼らず、国内の共感層をターゲットにしたビジネスモデルで、わずか3年で売上10倍という驚異的な成長を遂げています。
ポイントは3つあります。
1. 地域資源を再活用
使われなくなったテニスコート跡地を活用し、自然と調和したグランピング&サウナ施設を作ったこと。これにより「白馬ならではの価値」を提供しながら、新しい体験需要を掘り起こしました。
2. 共感型採用で人材難を克服
「求人を出しても来ない」という声が多い中、From PはSNS発信を通じてブランドを構築。世界観や理念に共感した人材が自ら応募する仕組みを作り、Uターンや移住希望者を呼び込みました。
3. 国内市場に軸足を置く
外国人観光客の動きに左右されないために、リモートワーカーや20〜30代カップルをターゲットに設定。「平日はワーケーション、週末は記念日利用」といった明確な利用シーンを描いた戦略で、安定した稼働率を実現しています。
■ なぜ「共感」がカギになるのか?
マーケティングの本質は「誰の心を動かすか」です。
インバウンド頼みの観光モデルは、一時的なブームで終わる可能性が高い。
一方、From Pのアプローチは「地域への愛着」「共に働く楽しさ」を軸に、共感コミュニティを形成しました。これは心理学的に言えば「所属欲求の充足」を刺激するモデルです。
ポイントは“観光”を目的ではなく、“関係づくり”の手段にしていること。
単に泊まるだけでなく「この場所を好きになってほしい」「ここで働きたいと思ってほしい」というストーリーがあるからこそ、人は集まるのです。
■ これからの観光地に必要な発想
白馬の事例は、日本中の観光地や地域にとって重要な示唆を与えています。
「稼ぐ観光」から「つながる観光」への転換が求められています。
- 価格競争より価値共創
→ 地元の文化や人との出会いを体験価値にする。 - 一過性より継続性
→ 短期的な観光客ではなく、何度も訪れたい人、移住や関係人口を増やす。 - 集客より共感
→ SNSで“世界観”を発信し、ファンを育てる。
これは不動産業にも通じる話です。土地や建物はモノですが、その背景にある「暮らしの物語」が価値を生みます。投資だけでなく、地域を愛する人が増えることこそ、持続可能な地域経済の鍵です。弊社も会員であるちば高滝観光イノベーション協議会にとって、必要な価値観になりそうです。
■ 「サウナ会議」──現場でリアルを感じる機会
2025年9月17日には、白馬村で「サウナ会議」というイベントが開催されます。
地元事業者と記者が直接対話し、課題と可能性を共有する場です。
こうしたリアルな場があることで、外部から来る人も「数字」や「トレンド」ではなく、人の思いに触れることができます。
地域の未来は、そこに関わる一人ひとりの意思で決まります。
観光はビジネスであると同時に、文化とコミュニティを守る手段でもある。
白馬の挑戦が、日本の観光の新しいモデルになることを期待しています。
今日のポイントまとめ
- 白馬村は「第二のニセコ化」で地価高騰・地元離れが進行。
- 有限会社ぴー坊の「From P」は、国内市場に軸足を置き、売上10倍を達成。
- キーワードは「共感・関係・持続性」。
- これからの観光は「稼ぐ」より「つながる」時代へ。
あなたはどう思いますか?
「観光地の価値は、自然か?文化か?人か?」
出典:PRTIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000092919.html