若者を巻き込む“不正な不動産投資ローン”問題とは?なぜ起きるのか、私たちはどう身を守るべきか

2025年11月23日に報じられた、若者を狙った不正な不動産投資スキーム
住宅ローンは「居住用」でなければ借りられない──これは、不動産に関わる仕事をしていれば常識です。

しかし今回の事件では、20〜30代の若者に「自宅購入を装って」住宅ローンを組ませ、偽装書類を使って約3億円の融資を詐取したとして、指示役を含む16人が逮捕されました。

私自身、不動産業を営み、日々たくさんのご相談を受ける立場として、今回の事件には大きな問題意識を持ちます。
この記事では、
「なぜこんなことが起きたのか」
「何が問題なのか」
「私たちはどう防ぐべきか」

という視点で、誰も傷つけず、しかし正確な理解が広がるよう解説していきます。


目次

なぜ若者が狙われたのか?

今回のスキームには、いくつかの“心理的な弱点”が巧妙に突かれています。

1. 「未来への不安」を利用される

記事にもあった通り、狙われたのは 投資初心者の若者 でした。

彼らは
・老後が心配
・資産形成を早く始めたい
・投資の勉強をしたい
という前向きな理由でセミナーに参加しています。

そこに「紹介役」と呼ばれる人物が現れ、
「不動産は絶対に負けない」
「毎月、返済額より賃料収入の方が多い」
と“成功例”を強調してくる。

未来に不安があると、人は「安心できる確実性」に弱くなります。ここに心理的な落とし穴が生まれます。

2. 「みんなやっている」という言葉の魔力

年収を水増しする行為(業界では“ふかし”)についても、
「みんながやっている」
「専門家に任せれば心配ない」
と説明される。

“みんなやっている”という言葉は心理学では社会的証明のバイアスと呼ばれ、人を簡単に安心させてしまう力があります。

3. 「プロが手続きする」と言われると安心してしまう

手続きが複雑なほど、初心者は「プロに丸投げしたくなる」。
そこに付け込んで、申込人の委任状まで勝手に作成し、金融機関とのやり取りまで進めていたというのだから、本人は「自分が詐欺の片棒を担いでいる」など想像もできません。


この事件で最も深刻な問題点

① 若者の人生を人質にしている

今回書類送検された女性看護師のように、「知らないうちに詐欺に加担した状態」になると、
・信用情報に傷がつく
・金融トラブルに巻き込まれる
・精神的ストレス
など、人生に大きな影響を及ぼします。

知識がない若者の“無知”につけ込むのは、ビジネスではありません。

② 金融機関のチェック体制にも課題がある

堀鉄平弁護士の指摘にもある通り、
・確定申告書の定期チェック
・融資後の家賃収入の有無確認
などが行われていれば、多くの不正は防げたかもしれません。

金融機関が「トラブルを嫌がって届け出なかった」という証言も報道されています。
この“問題の先送り”が、不正を蔓延させてしまう温床になります。

③ 不動産業界全体の信用を傷つける

私は25年以上、不動産の世界で仕事をしてきました。
この事件のように、一部のプレイヤーによる不正が報じられると、真っ当に仕事をしている業者まで疑われることがあります。

まじめな不動産業者ほど、こうした情報には心を痛めています。


不動産投資で「絶対に知っておくべき鉄則」

私はクライアントにいつもお伝えしていることがあります。
それは不動産投資は“仕組みを理解すれば安全にできるが、理解していないまま始めると危険が増える”ということ。

今回の事件を踏まえて、投資初心者の方に特に知ってほしいポイントをまとめます。

● 鉄則1:居住目的以外で「住宅ローン」は使えない

これは法律ではなく金融機関の基準ですが、絶対です。
もし投資目的で住宅ローンをすすめてくる人がいれば、その時点で関わってはいけません。

● 鉄則2:年収の水増しは「詐欺」

・副収入を偽装
・源泉徴収票を偽造
・税務署への虚偽申告
これらは明確な犯罪です。

“みんなやっている”という言葉に騙されてはいけません。

● 鉄則3:「毎月必ず儲かる投資」は存在しない

不動産は安定資産ではありますが、
・空室
・想定外の修繕
・金利上昇
など、収支が変動する要因はいくつもあります。

“絶対に儲かる”と断言する人は例外なく怪しいです。

● 鉄則4:不明点を質問した時に「面倒くさそうな顔をする人」は信用しない

これは心理学的にとても重要です。
本当に顧客の利益を考えている人は、質問されれば喜んで説明します。

質問を嫌がる人は「都合の悪いことを隠している」可能性が高い。


なぜ不動産業界では不正が起きやすいのか?

業界歴の長い立場から言わせてもらうと、背景には以下があります。

● 不動産は金額が大きい

1件で数千万〜億。
悪い人間からすると「一発当てれば大きい」。

● 一般の人が不動産知識に乏しい

そのため「専門家らしさ」を演出されると信じてしまいやすい。

● 仕組みが複雑で理解しづらい

ローン、税務、登記、法律…
複数の専門領域が絡むため、初心者は「プロに任せたい」と感じる。

この3つが揃うと、悪質な業者にとっては“狙いやすい市場”になってしまうのです。


では、どうすれば被害を防げるのか?

ここでは読者の皆さんに今日からできる「自衛策」をお伝えします。

● ① 複数の専門家に相談する

1人の意見が正しいとは限りません。
FP、不動産会社、税理士…
2〜3人に聞いて判断してください。

● ② 理解できないまま契約しない

分からないものは必ず質問する。
説明に納得できなければ契約しない。
それで嫌がる業者はそもそも選ぶべきではありません。

● ③ “うますぎる話”は一度立ち止まる

投資とは本来、
「利益の可能性があるが、リスクもある」
というもの。

“ノーリスクで儲かる”という話は現実には存在しません。


最後に ― 若者を守るために、業界全体が変わる必要がある

今回の事件で明らかになったのは、
無知につけ込まれた若者たちが、意図せず犯罪に巻き込まれてしまう構図 でした。

これは、個々の若者の問題ではありません。
情報格差を埋められなかった社会全体の課題でもあると思います。

私たち不動産業界にいる者は、
・正しい知識を発信する
・透明性を高める
・“不動産は難しい”という空気を壊す
ことが求められています。

同時に、投資を検討する若い世代の方には、
・焦らない
・質問する
・疑問を放置しない
という姿勢を身につけていただければ、被害に遭う可能性は大幅に下がります。

今回のニュースを、未来の自分を守る“学びの機会”にしていただければ嬉しいです。

出典:読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/national/20251123-OYT1T50004/

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