LIFULLとレオパレス21の連携が意味する「おとり物件撲滅」の本質

LIFULLとレオパレス21の連携が意味する「おとり物件撲滅」の本質

不動産業界において長年問題視されてきた「おとり物件」。すでに契約済みで存在しないにもかかわらず、あたかもまだ募集中であるかのようにポータルサイトに掲載され続けてしまう物件のことです。住まい探しを経験したことのある方なら、一度は「問い合わせたらすでに埋まっていた」というがっかり体験をされたかもしれません。

今回、LIFULL HOME’Sを運営する株式会社LIFULLが、賃貸大手レオパレス21と情報連携を開始したというニュースは、この「おとり物件」問題に対して業界全体が一歩前進したことを示すものです。これにより、LIFULL HOME’Sと直接データ連携する管理物件数は約278万戸となり、全国の委託管理住宅の約4分の1をカバーする規模にまで拡大しました。

ここで重要なのは「単なる提携拡大」ではなく、「業界構造の変化」を映し出しているという点です。


目次

「おとり物件」はなぜなくならないのか?

不動産広告は本来、不動産会社が責任を持って正しく更新しなければなりません。しかし実際には次のような構造的な要因があります。

  1. 情報更新のタイムラグ
    契約が成立しても、その情報が仲介会社やポータルサイトに反映されるまで時間がかかる。
  2. 担当者の作業負担
    数百件以上の物件を扱う仲介店舗では、1件ずつ情報を手作業で更新することが難しい。
  3. 意図的な誇張
    かつては「集客のためにわざと残す」という不適切な慣習があったのも事実です。

こうした背景から、ユーザーが無駄足を踏んでしまう構造が半ば“常態化”してきました。


LIFULLの挑戦:人の作業からシステム連携へ

LIFULLが進めているのは「管理会社とポータルが直接データを連携する仕組み」です。これにより、契約が成立した時点でポータル上の情報も即時に非表示に切り替わる。

これはユーザーにとっては「安心感の提供」であり、業界にとっては「信頼の回復」につながります。不動産業は情報の非対称性が大きい産業ですが、そのギャップをテクノロジーで縮める試みといえるでしょう。


レオパレス21の参画が持つ意味

今回のニュースの要所は「レオパレス21が加わったこと」です。レオパレスは全国に約54万戸を管理し、とくに単身者やコンパクト住戸に強みを持つ会社です。日本国内の29㎡以下の借家数のうち、約9.2%をカバーしているというシェアは決して小さくありません。

この規模の管理会社が加わることで、実際に「ユーザーが体感できる改善」へつながる可能性が高まります。特に大学進学や転勤などで急いで部屋を探す層にとって、情報の正確性は命綱です。


信頼こそ最大の資産

私は不動産業に携わる者として、「信頼の回復」がこの取り組みの核心だと考えています。
おとり物件が残り続けると「不動産会社は信用できない」というイメージが世の中に浸透してしまう。これは業界全体にとって大きな損失です。

その意味で、LIFULLのように“ユーザー起点”で仕組みを改善する企業の姿勢は非常に意義があります。短期的な集客効率よりも、長期的な信頼を優先する。ここに時代の流れがあります。


今後の課題

もちろん、これで「おとり物件」が完全に消えるわけではありません。

  • 未連携の管理会社や小規模業者
    まだシステムに乗っていない物件情報は数多く存在します。
  • 売買領域への広がり
    今回は賃貸が中心ですが、中古マンションや戸建でも情報の鮮度は課題です。
  • 利用者教育
    ユーザー側も「ポータルの情報は常に流動的」という前提を理解する必要があります。

業界全体が連携し、国や業界団体も巻き込んだ「標準化」の動きが今後の鍵になるでしょう。


情報の透明性は社会のインフラ

哲学を学んだ者として私が思うのは、「情報の透明性は社会の信頼基盤」だということです。
古代ギリシャの哲学者プラトンは「正しい知識が正しい行為を導く」と説きました。住まい探しという人生の大きな選択において、正しい情報が与えられることはまさに生活の基盤を守る行為にほかなりません。

今回のLIFULLとレオパレスの取り組みは、不動産業界における「正しい知識の共有」への挑戦だと言えます。業界が不透明さから透明性へと進むことは、利用者だけでなく、不動産会社自身の未来をも守ることにつながるでしょう。


結びに

おとり物件の問題は、不動産業に携わる者にとって耳の痛いテーマかもしれません。しかし同時に、これを解決することは「業界全体の信頼を取り戻すチャンス」です。

LIFULL HOME’Sの挑戦はまだ道半ばですが、確実に未来への扉を開いています。情報が透明で正確である社会は、人々の時間を守り、安心を育み、そして何より「人と住まいの出会いを豊かにする」ものです。

私たち不動産に関わる者一人ひとりが、この変化を後押しする姿勢を持てるかどうか。そこに、次の10年の不動産業の姿がかかっていると私は感じています。

出典:株式会社LIFULL https://lifull.com/news/44611/

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