不動産価格はまだ上がる?それとも横ばい?―意識調査から見える日本の未来

不動産価格はまだ上がる?それとも横ばい?―意識調査から見える日本の未来

野村不動産ソリューションズの調査によると、「今後の不動産価格は上がる」と答えた人は41.4%。前回よりわずかに減ったものの、依然として最多を占めています。一方、「横ばい」は約3割、「下がる」は18%弱。つまり、多くの人は「下がる」とは思っていないということです。

さらに興味深いのは「売り時かどうか」という質問。78%以上の人が「売り時」または「どちらかといえば売り時」と回答しています。理由のトップは「不動産価格が上がったため」。つまり、「利益を確定したい」と考える人が多いということです。

一方で、「買い時だと思う」人は26%程度にとどまり、買い控えの姿勢が鮮明になっています。この数字から見えてくるのは、「売りたい人は多いが、買いたい人は減っている」というシンプルな構図です。


目次

◆ なぜ、こうした心理が働くのか?

心理学的に見ると、人間は「高値掴み」を恐れる生き物です。過去に比べて価格が高騰していると、どうしても「ここからさらに上がるだろうか?」と不安になります。そして「もしかして今がピークでは?」という心理が働く。これはプロスペクト理論でいう「損失回避バイアス」に近い現象です。

一方、売る側の心理は「利益を逃したくない」。ここにも心理的なバイアスが絡みます。アンカリング効果といって、「過去の安値を知っているから、今の価格は十分高い」と感じ、売却を正当化するわけです。

しかし、興味深いのは、こうした心理が実際の市場にどう影響するかです。売りたい人が多く、買いたい人が少なければ、市場は一時的に供給過多になります。これは価格下落の圧力につながる要因です。

プロスペクト理論:人は「利益を得る喜び」よりも「損失を避ける痛み」を強く感じる心理傾向があるという理論。
例えば、1万円得する喜びより、1万円失う痛みの方が大きいため、損を避けるために非合理な判断をしやすくなります。

アンカリング効果:最初に提示された数字や情報(アンカー)が、その後の判断や評価に強い影響を与える心理現象。
例えば、「この商品は通常10万円ですが、今日は5万円!」と言われると、実際の価値よりお得に感じやすくなります。


◆ 建築コスト上昇と円安の影響

では、本当に価格は下がるのでしょうか?ここで忘れてはいけないのが、建築コストの上昇と円安の影響です。調査の自由回答にもあったように、「建築資材や人件費が上がり続けている」という現実は、供給側の価格を押し上げます。

実際、木材や鉄骨、さらには住宅設備に至るまで、ここ数年で価格は大幅に上昇しました。さらに、日本は少子高齢化で職人不足が進んでいます。この人件費の高騰も止まりません。こうした「構造的なコスト上昇」は、不動産価格の底堅さを支える要因になります。

もう一つは円安。外国人投資家にとって、日本の不動産はまだ割安感があります。特に東京・大阪などの大都市圏や観光地のリゾート物件は、海外から見れば「お買い得」です。この資金流入が、価格の下支え要因になるのは間違いありません。


◆ 金利上昇という不安材料

ただし、明るい材料ばかりではありません。調査でも81.7%の人が「金利は上がると思う」と回答しています。実際、日銀は2024年にマイナス金利を解除し、今後も段階的な利上げが見込まれています。住宅ローン金利が上昇すれば、買い手の負担は確実に増えます。

不動産価格は「買える人がいるかどうか」で決まります。金利が上がれば、月々の支払い額は大きくなり、購入をためらう層が増えるでしょう。特に、共働き世帯や若年層の住宅取得は難しくなります。


◆ 私の結論:「二極化」が進む未来

ここで、私の視点をまとめます。今後、日本の不動産価格は「一律に上がる」わけではなく、二極化が進むと考えます。

  • 都市部やインバウンド需要のある地域 → 価格は維持または上昇
    東京・大阪・福岡などの大都市、観光地や再開発エリアは、外国人投資家や富裕層の資金が入り続けるため、簡単には下がりません。
  • 郊外や交通不便なエリア → 下落リスク大
    人口減少が進む地方や、通勤に不便なエリアでは、需要が減り価格は下がりやすいでしょう。特に築古の戸建てやマンションは要注意です。

つまり、「不動産はまだ上がる?」という問いへの答えは、エリアと物件次第ということです。


◆ 哲学的視点:「不動産と人生の選択」

ここで、少し哲学の話をしましょう。不動産を買うとき、多くの人が「今が得か損か」で判断します。しかし、本当に大切なのは「その家でどんな時間を過ごしたいのか」です。

カントは「目的そのものとして人を扱え」と言いました。不動産も同じです。単なる投資対象ではなく、人生を豊かにする場所として選ぶこと。それが本質だと私は思います。

もちろん、損をしないことも大切です。しかし、最後に問うべきは「ここで暮らしたいか」「ここで家族の物語を紡ぎたいか」。数字や金利だけでなく、自分の価値観に基づいて選ぶことが、最終的な満足につながるのです。


■ まとめ

  • 「価格は上がる」と思う人は4割超だが、横ばい予想も増加中
  • 売りたい人は多いが、買いたい人は減少傾向
  • 建築コストと円安は価格の下支え要因
  • 金利上昇は購入意欲を冷やすリスク
  • 今後はエリアごとの二極化が進む
  • 本当に大切なのは「その不動産でどんな人生を送りたいか」

あなたはどう考えますか?「家は資産か、それとも幸せの器か」。この問いを胸に、次の一歩を選んでください。

出典:不動産流通研究所 https://www.re-port.net/article/news/0000079642/

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