― 相続と空き家の“迷子”をなくす社会インフラへ ―
日本が抱える社会課題のなかでも、“静かに、しかし確実に”深刻さを増しているのが 空き家問題 です。
人口減少、地方から都市部への流出、そして相続の長期化や放置——。
こうした複合要因が絡み合い、全国で1000万戸以上に迫る勢いで空き家が増え続けています。
そんな中、2025年11月25日に発表された アットホームと辻・本郷ITコンサルティングによる「better相続」との業務提携 は、空き家問題の“本丸”に切り込む取り組みと言えます。
この記事では
- この提携がなぜ重要なのか
- 空き家所有者や相続人にどんなメリットがあるのか
- 不動産業界にどんな変化が起きるのか
を不動産業に携わるものとして、そして心理学・哲学を学んだ者としての視点からわかりやすく解説します。
アットホームと「better相続」が組む意味
今回の提携の本質は “迷子をなくすこと” にあります。
相続手続きは、当事者にとって人生で数回あるかないか。
そのうえ、税理士・司法書士・行政書士・不動産会社……と、関係者が多く、どこに相談すればよいかすらわからない。
ここに心理的ハードルが生まれます。
空き家が放置される理由の大部分は「億劫さ」や「不安」。
市場や制度ではなく、人間の心理が原因です。
哲学的にいえば、情報過多の現代社会で意思決定が遅れる「決定回避バイアス」の典型例。
人は不明確なことに直面すると、現状維持を選びます。その結果、空き家はそのまま放置され「負動産化」していく。
そこで今回の提携の意義
アットホームはすでに全国880自治体と連携し「空き家バンク」という受け皿を持っています。
そこに辻・本郷ITコンサルティングの 相続を“一気通貫でできるシステム”「better相続」 が加わる。
これはつまり、
「空き家をどうすればいいかわからない」→「相続も管理も相談もワンストップで解決」
という流れをつくる試みです。
空き家問題の核心は制度ではなく「誰に相談すればわかるか」です。
今回の提携は、その心理的ハードルを劇的に下げる“構造の改革”といえます。
空き家所有者にとっての3つのメリット
① 相続〜処分までの手続きが一気通貫
従来は、
- 相続税→税理士
- 相続登記→司法書士
- 売却相談→不動産会社
と、専門家を探すだけで疲れる状態でした。
「better相続」の凄さは Webブラウザだけで相続手続きの大部分が完結する こと。
専門家ごとの“分断”がなくなることが、空き家放置の予防につながります。
② 「どこに相談すれば?」という不安が消える
多くの相談者は「まずどこに行けばいいかわからない」という段階で止まります。
アットホームの空き家バンク内にワンストップ窓口ができることで
「まずはここへ行けばいい」
という安心感が生まれます。
心理学的にいえば、明確な“次の一歩”が提示されるだけで、人の行動は10倍変わります。
③ 早期の利活用につながる
相続が整えば、放置される理由がひとつ消えます。
結果として
- 売却
- 賃貸
- リノベ活用
- 移住・定住向けの活用
などの判断ができる。
空き家の流動化は、地方経済にもプラスの影響を与えます。
業界視点で見るインパクト:空き家は「情報産業」になる
アットホームはIT基盤を持ち、全国の空き家データを一手に担う存在です。
そのアットホームが「better相続」と提携したということは、空き家を情報インフラとして扱おうとする意思の表れでもあります。
つまり今後、空き家に関する産業は
“不動産業” → “情報×相続×地域活性化” へシフト
していくでしょう。
相続のDXはすでに始まっており、AI×手続き自動化は加速しています。
不動産業界の中でも、空き家領域は特にITとの親和性が高い分野。
これから3〜5年で大きな変化が起こるはずです。
未来予測:空き家問題は「放置から予防」へ
これまでの空き家政策は“事後対応”が中心でした。
しかし今回のような取り組みは、明確に“予防”へのシフトです。
- 相続発生前の準備
- 相続開始直後のガイド
- 登記を自分で完結できる仕組み
- 空き家バンクでの利活用提案
この流れが整うと、日本の空き家問題は 「放置されて増える」→「早期に動いて減らす」 へ変わります。
哲学的に言えば、これは“問題の原因となる構造を変える”アプローチです。
表面の「空き家」を減らすのではなく、根本原因である「相続の負荷」を減らす。
持続的な解決策として非常に優れています。
まとめ:今回の提携は「社会のメンテナンス化」
アットホームと辻・本郷ITコンサルティングの提携は、
空き家問題に対する大きな転換点になる可能性を秘めています。
- 相続手続きの負担軽減
- 空き家の放置予防
- 早期の利活用支援
- 地域創生・移住促進との連携
すべてが“点”ではなく“線”でつながります。
私は不動産業者として長く現場を見てきましたが、
空き家問題の最大のボトルネックが「手続きの煩雑さと不安」だと肌で感じてきました。
今回の提携は、まさにその部分を丁寧に解消する試み。
誰かを責めることなく、社会の仕組みそのものをアップデートしようとする姿勢に強い希望を感じます。
空き家問題は、持ち主一人では抱えきれない課題です。
だからこそ、こうした“伴走型の仕組み”が増えていくことを私は心から歓迎します。

出典:アットホーム株式会社 https://athome-inc.jp/news/release/services/akiyabank-tsujihongo-202511/

