TX開業20年、つくば駅周辺は再び進化のステージへ

TX開業20年、つくば駅周辺は再び進化のステージへ

つくばエクスプレス(TX)が開業して、今年でちょうど20年。2005年8月24日、つくば駅には初乗りを楽しむ乗客が殺到し、駅構内はお祭りのような熱気に包まれていたといいます。当時、最初の列車に乗ろうと長蛇の列ができ、プリペイドカードの精算窓口には行列があふれた──そんな光景を覚えている方もいるでしょう。

あれから20年。TXは、秋葉原からつくばまでを最短45分で結ぶ高速鉄道として、首都圏と茨城県南を近づけただけでなく、沿線の住宅開発や産業集積にも大きな影響を与えました。しかし、時間の経過とともに、中心市街地の「空洞化」という課題にも直面しました。

2017年には駅前の百貨店「西武筑波店」が閉店、翌年には核テナントだった「イオンつくば駅前店」も撤退。駅前から大型商業施設が消え、かつての賑わいに陰りが見えた時期があったのです。

■つくば再生の鍵は「科学技術都市の強み」を活かすこと

そんな中、つくば市は再生に向けて動き始めます。2020年には「つくば中心市街地まちづくり戦略」を策定し、老朽化したセンタービルの改修や、まちづくり会社の設立などに約10億円を投じてきました。そして今回、TX開業20周年という節目のタイミングで、新たな大規模プロジェクトが動き出します。

その一つが、筑波大学が進める「企業との共同研究拠点」。北東約400メートルにある職員宿舎跡地(約3.3ヘクタール)に、長さ100メートル、幅70メートル、高さ22メートルという大規模な「大空間実験棟」を建設する計画です。ここでは、ドローンや自走ロボットといった先端技術の研究が行われる予定で、すでに20社程度が参画を検討しているとのこと。

注目すべきは、単なる研究施設ではなく、市民にも開かれたオープンスペースを設ける点です。研究と市民が交わる空間を作ることで、テクノロジーを「遠いもの」ではなく「日常の中のワクワク」に変えていく。この発想は、科学技術都市つくばの本質に立ち返るものだと思います。

さらに、駅前の中央公園も刷新されます。池のそばにデッキを新設し、ベンチを並べて、訪れる人がゆっくり過ごせる憩いの場に。ここは、TXで訪れた人たちが写真を撮りたくなる「新しい顔」になるかもしれません。

■なぜ今、こうした取り組みが重要なのか?

都市には「成長」「停滞」「再生」というライフサイクルがあります。TX開業直後のつくばは、言わば成長フェーズ。しかし、西武やイオンの撤退で停滞期に入りました。そして今、再生フェーズに入ろうとしている。

こうした再生の成否を分けるのは、「その土地ならではの強みをどれだけ活かせるか」にかかっています。つくばには、他の都市にはない強みがあります。それは、「世界有数の研究学園都市」であること。筑波大学をはじめ、国の研究機関や先端企業が集積している。その資産を街づくりにどう活かすかが、未来の価値を決めるのです。

つくばセンター地区活性化協議会の飯野哲雄会長が語るように、「科学技術都市、文教都市という他の駅にはない強みを打ち出していくこと」が不可欠です。単なるショッピングモールや飲食店では、つくばの魅力は際立ちません。「未来を感じる街」「学びと遊びが融合する街」──そうしたビジョンが求められています。

■つくば再生の成功条件を考える

経営やマーケティングの視点から考えると、再生プロジェクトの鍵は3つあります。

  1. 地域アイデンティティの再定義
    「つくばに住む理由」「訪れる理由」を言語化することです。例えば、「科学と自然が調和する未来都市」。このメッセージを一貫して打ち出すことで、住民・企業・行政のベクトルが揃います。
  2. オープンイノベーションの場づくり
    企業・大学・市民が交わる場所を意図的にデザインすること。シリコンバレーのカフェや、バルセロナのイノベーション地区のように、「偶然の出会いが価値を生む」仕掛けを作る。
  3. 体験価値の創出
    観光でも買い物でも、今の時代は「モノ」より「体験」が選ばれます。中央公園を単なるベンチのある公園にするのではなく、科学イベントやアート展示を絡めることで、「また来たい街」に変わります。

■TX開業20周年が示す未来

TX開業当日、券売機の前で切符の買い方を説明していた駅員さんも、今は後輩を育てる立場に。20年で時代は変わりました。でも、人が街に求めるもの──ワクワクと安心──は変わらない。

つくばが再び進化するステージに立った今、私たちは何を期待すべきか?それは、「科学を感じる日常」「学びと遊びが融合した街」「人と技術が共生する社会」。これが実現したとき、つくばは単なるTXの終着駅ではなく、日本の未来を象徴する街になるはずです。

──20年前、つくば駅を出発した一番列車。その列車に込められた夢は、まだ続いています。

出典:茨城新聞クロスアイ https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=17560429588622

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