「やりたいこと」より「向いていること」で選ぶキャリア論 ― 千葉商科大学×ブロードマインドの座談会に見る、ミスマッチのない採用のつくり方

目次

はじめに ― なぜこのニュースを取り上げるのか

前職の時にお世話になった方がいる会社のニュースは気になるもので直感的に目を引くニュースということで今回取り上げました。

2026年6月9日、千葉商科大学 総合政策学部の授業に、金融サービス企業ブロードマインド株式会社の採用担当者が登壇し、大学2年生を対象としたキャリア対話を実施したというニュースが発表されました。

一見すると「一企業の採用広報」に見えるこの取り組みですが、私はここに、不動産業やコンサルティング業に携わる私たちにとっても、そして経営に携わるすべての方にとっても、非常に示唆に富む要素が詰まっていると感じています。今日はこのニュースを、経営・マーケティング・そして哲学という三つの視点から読み解いてみたいと思います。

「やりたいこと」探しという呪縛からの解放

座談会の中で印象的だったのは、「やりたいことが見つからない」という学生の質問に対する回答です。担当者は、仕事を「やりたいこと」という一つの軸だけで探す必要はなく、むしろ自分が得意なことや、自分にとって当たり前だと思っていることに目を向けるよう促していました。

これは大学で哲学を学んだ私にとっても、非常に腑に落ちる考え方です。ソクラテスの「無知の知」ではありませんが、人は自分自身のことを、実は一番よくわかっていないものです。「好き」や「やりたい」という感情は移ろいやすく、時に強い思い込みに引きずられます。一方で「得意」や「当たり前」は、他者からのフィードバックによって初めて輪郭が見えてくるものであり、より客観的で持続可能な自己理解の軸になり得ます。

これは、私たちが不動産の現場でお客様の資産形成や住まい選びの相談に乗る際にも通じる話です。お客様自身が「欲しい」と言っている条件と、本当に「合っている」条件が一致しないことは珍しくありません。プロの役割とは、相手の言葉をそのまま受け取るのではなく、対話を通じて本人も気づいていない適性や優先順位を一緒に発見していくことにあるのだと、改めて感じさせられました。

「聞くことは話すことより大事」という営業の本質

もう一つ注目したいのが、「実はお客様の話を聞くことの方が、話すことよりずっと大事な仕事」という担当者の言葉です。年間100世帯以上のコンサルティング経験から出てきたこの一言には、営業やコンサルティングという仕事の本質が凝縮されています。

これはダイレクトレスポンスマーケティングの世界で語られる「顧客理解なきセールスは成立しない」という原則そのものです。学生が抱きがちな「営業=話すのが上手い人がやる仕事」というイメージを、現場の実感をもって解きほぐしている点が秀逸だと感じます。不動産仲介の現場でも、契約を急ぐあまり話しすぎてしまう営業担当より、お客様の懸念や背景を丁寧に聞き取る担当者の方が、結果的に長期的な信頼関係を築き、紹介やリピートにつながるケースを数多く見てきました。

ミスマッチ防止という「予防的経営」の発想

今回の取り組みで経営的に興味深いのは、採用選考の場に至る前段階、つまり学生が本格的に就職活動を意識し始める前から接点を持つという「早期化」の発想です。新卒離職率を業界平均より抑えられている背景には、選考というワンショットの場ではなく、継続的な対話の積み重ねによって相互理解を深めるという、いわば「予防的な採用戦略」があるように見えます。

これは経営コンサルティングの視点で言えば、問題が顕在化してから対処する「対症療法型」の経営ではなく、構造的にミスマッチが起きにくい仕組みを事前に設計する「予防型」の経営と言えるでしょう。人材の定着に悩む中小企業にとっても、大学や地域コミュニティとの継続的な接点づくりは、コストをかけずに実践できる有効な一手になり得ると思います。

まとめ ― 対話の積み重ねが、選ばれる組織をつくる

今回のニュースから私たちが学べることは、採用や教育といった枠を超えて、あらゆる「人と人との関係構築」に応用できる普遍的な視点だと感じます。

  • 「やりたいこと」ではなく「向いていること」に目を向ける自己理解の促し方
  • 話す力よりも「聞く力」を重視する対話の姿勢
  • 選考という一点ではなく、継続的な対話によって信頼を積み上げる予防的な関係構築

これらは、私たちが不動産という「人生の大きな意思決定」に関わる仕事をする上でも、忘れてはならない姿勢だと改めて感じさせられるニュースでした。

出典:ブロードマインド株式会社 https://www.b-minded.com/news/pressrelease/3923/

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