営業職初任給40万円は是か非か?オープンハウスグループの挑戦から読み解く「これからの営業人材」と日本企業の進化

営業職の初任給が40万円。
この数字を見て、驚いた方も多いのではないでしょうか。

2025年12月、株式会社オープンハウスグループが発表した「2027年新卒営業職・初任給40万円」というニュースは、不動産業界に限らず、日本の雇用市場全体に大きな問いを投げかけました。加えて、入社支度金30万円、独身寮のフリーレント、充実した育児・ライフイベント支援制度。表面的には「好待遇」「高給」という言葉が目立ちますが、その本質はもっと深いところにあります。

私はこのニュースを、単なる“給与引き上げ競争”としてではなく、日本企業が人材に対してどのような価値観を持ち始めているのかを象徴する出来事として捉えています。

目次

なぜ今、営業職なのか

近年、営業職は「きつい」「泥臭い」「敬遠されがち」と語られることが増えました。対面コミュニケーションへの苦手意識、デジタル完結志向、働き方の多様化。こうした時代背景の中で、営業人材の確保が難しくなっているのは事実です。

しかし、オープンハウスグループは真逆のメッセージを打ち出しました。
「営業は企業のコアであり、最も価値ある仕事である」と。

顧客と向き合い、声を聞き、その情報を仕入れ・設計・建築へとつなげる。これは同社が語る“マーケットイン”の思想であり、営業を単なる売り手ではなく「価値創造の起点」と位置づけていることが分かります。だからこそ、優秀な人材には最初から高い報酬と明確な評価軸を用意する。この一貫性は、経営として非常に合理的です。

高給=楽、ではないという誠実さ

ここで重要なのは、同社が「楽して稼げる」とは一切言っていない点です。
むしろ、「愚直に泥臭く取り組む社員に挑戦の場を提供する」という価値観を明言しています。

年7回の評価制度、明確なインセンティブ設計、成果に応じた昇進。20代で年収1,000万円を超える社員が4割以上いる一方で、それは結果を出した人に対する正当な報酬である、という姿勢が貫かれています。心理学的に見ても、「努力と報酬の因果関係が明確である組織」は、人のモチベーションを最も健全に保ちます。

福利厚生が示す“長く働く前提”

もう一つ注目すべきは、福利厚生の内容です。
出産祝い金、ひとり親手当、ベビーシッター補助、卵子凍結費用補助――これらは単なる話題作りではありません。

企業が「社員の人生は長く、変化する」という前提に立っている証拠です。
短期的に使い潰すのではなく、ライフステージが変わっても働き続けられる設計を本気で考えている。これは、人口減少社会において企業が生き残るための、極めて現実的な戦略でもあります。

DX・AIと営業の再定義

さらに同社は、DXやAIによって営業の“本質”に集中できる環境を整えています。事務作業の分業化、RPAによる年間11万時間の業務削減。これは「長時間労働を美徳としない」という、明確なメッセージでもあります。

哲学的に言えば、これは「人間にしかできない仕事とは何か」を問い直す試みです。対話、共感、意思決定。営業の価値をそこに再定義しているからこそ、テクノロジーへの投資と高い報酬が両立しているのです。

初任給40万円が投げかける問い

このニュースに賛否があるのは自然なことです。しかし私は、この取り組みを「日本企業の一つの到達点」として、前向きに評価したいと思います。

高給を出す覚悟。
人を育て、報いる覚悟。
そして、結果に対して正直である覚悟。

初任給40万円とは、その覚悟の象徴です。
この動きが、営業という仕事の価値を再評価し、日本全体の「働くこと」への希望につながるのであれば、それは決して一社だけの話ではありません。

これからの日本企業に求められるのは、きれいごとではなく、一貫した思想と実行力なのだと――このニュースは、静かに、しかし力強く教えてくれているように思います。

出典:株式会社オープンハウスグループ https://openhouse-group.co.jp/news/release/pdf/20251219_2.pdf

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