都心で木造オフィスの時代へ:三井不動産株式会社『(仮称)日本橋本町一丁目5番街区計画』着工から見る〈建築×サステナビリティ〉の新潮流

今回取り上げるのは、三井不動産が東京都中央区日本橋本町にて着工した、木造構造を取り入れた賃貸オフィスビル「(仮称) 日本橋本町一丁目5番街区計画」です。建築・不動産・環境という私の専門領域とも大きく関わるニュースですので、深掘りして「なぜ今」「どこがポイント」「私たちにとって何が変わるか」という観点からお伝えします。どうぞ最後までお付き合いください。


目次

ニュースの概要と注目ポイント

まず、今回発表されたニュースの主なポイントを整理します。

  • 三井不動産は「(仮称)日本橋本町一丁目5番街区計画」を 2025年11月1日 に着工。
  • 所在地は東京都中央区日本橋本町一丁目5番地。延床面積約18,000 m²、地上11階・地下1階。構造は鉄骨・木造・一部SRC。
  • 木材の活用が大きな特徴:グループ保有林を含む 900m³超 の木材を構造・内装に活用。
  • 高層階(8〜11階)は、床・壁・柱・梁など “主要構造部” に木材を使用し、実質“純木造”オフィス空間を実現。低層階(2〜7階)にも木造耐震壁を採用。
  • 運用・建築時双方で環境性能を強化。事務所部分で「Nearly ZEB(ゼロ・エネルギー・ビルに近い)を取得予定」、建築時CO₂排出量を鉄骨造比で約25 %削減想定。
  • 設計は 株式会社山下設計、施工は 株式会社大林組。竣工予定は2028年2月末。

以上が、今回のニュースのおおまかな内容です。


なぜ「今」木造オフィス?その背景と意味

次に、このプロジェクトが示す「なぜ木造オフィスなのか」「なぜ都心日本橋なのか」という背景を、私の視点で整理します。

(1) 環境・サステナビリティ意識の高まり

世界的に「脱炭素」「循環型資源」「サステナブル建築」が急速に議論され、建築分野においても木造、CLT(クロスラミネイティッドティンバー)などが注目を集めています。
今回、三井不動産グループが自社保有林を含め「植える→育てる→使う」サイクルを推進し、“終わらない森”をテーマに掲げていることが象徴的です。
さらに、建築時のCO₂削減、運用時の省エネという二軸で環境負荷低減を図っている点も、明確に時代の要請を捉えています。

(2) 都市木造の新潮流

これまでは木造建築というと低層住宅・公共施設が主でしたが、高層オフィスで木材を主要構造材に使うという事例はまだ少数です。
本計画は「高層階の8〜11階を主要構造部に木材を用いた純木造オフィス空間」とし、「1万m²超のオフィスビルで都内初のNearly ZEB取得予定」という点で、都市中心部における木造オフィスの本格化を示唆しています。
このような挑戦は、木材を建築資源として再定義し、都市の使われ方・設計思想を変える可能性があります。

(3) テナント環境・ワークプレイスの変化

オフィス環境も変わってきています。特にポストコロナの働き方変化、社員のウェルビーイング(健やかさ)意識、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)対応などが強まっています。
「都心にいながら自然を感じられるオフィス」「木に触れられる窓際スペース」という設計コンセプトは、テナントにとって差別化要素として響くでしょう。構造や性能だけでなく“働き心地”まで設計に組み込まれているのがミソです。

(4) 不動産価値・街づくりとしてのインパクト

立地が東京・日本橋、江戸桜通り沿い、COREDO室町近くという“都心”の希少立地であることも見逃せません。都心でこのような木造+環境性能を兼ね備えたオフィスが供給されることで、街区全体の価値向上が期待できます。
さらに、木材活用により「地域・林業・建設」など複数産業が関わる“循環型”価値創造という視点も、街づくりという観点から極めて興味深いものがあります。


このプロジェクトから読み取る3つの示唆

私の経営・マーケティング・心理学視点から、「このニュースから我々が何を学び取るか」「どのように活かせるか」を整理します。

(1) 「資源(木材)/空間(都心)/ストーリー(循環)」の三軸が組み合わさる

この計画では、木材という資源、都心という希少空間、そして「植える→育てる→使う」というストーリーが明確に組み合わされています。マーケティングで言えば、機能的価値(構造・性能)に加えて、情緒的価値(木に触れる、自然を感じる)・社会的価値(環境・サステナビリティ)が加わっています。
これは、今後不動産・オフィスの提供価値として「モノ」ではなく「意味・体験・社会貢献」が一体となる設計が重要になるという示唆です。ユーザー・企業が“意味ある選択”を求めているならば、私達が関わる不動産提案やシェアキッチンなどの空間設計でもこの観点は応用可能です。

(2) 差別化+未来志向=競争優位

都内のオフィス市場では「立地」「設備」「価格」が競争軸となりがちですが、今回のような木造+Nearly ZEBというファクターは、差別化要因として鮮明です。しかも「未来志向(脱炭素・SDGs)」を体現しているので、テナント企業のブランド価値向上にもつながる。
私の地元千葉・五井駅前で運営しているシェアキッチン「SOMARU」や、不動産会社でも、このような時代の価値軸を意識した提案を強化すべきです。クライアントは“古いオフィス”ではなく“次世代オフィス”を意識し始めています。

(3) 心理的安心とパーパス(目的)が価値を高める

木材の“ぬくもり”、自然を感じるオフィス空間という要素は、心理学的にも「居心地がよい空間」「ストレスが少ない環境」として認知されやすいです。働く人の満足度・生産性にプラスとなる可能性があります。さらに「社会的に意味のある建物」「環境貢献に寄与している」というメッセージが企業の採用・ブランディングにも有利に働きます。
ステップメールやSNSでフォロワーを増やす際にも、「なぜこのサービスを提供するのか」「どんな価値を世の中にもたらすのか」というパーパスを伝えることが大きな鍵です。この建築ニュースはまさにその典型と言えます。


不動産業・投資家視点での“注意点”と“チャンス”

ただし、椅子に座って“拍手”するだけではなく、リアルなビジネス視点からも冷静に見ておきたい点があります。

注意点

  • 木造・ハイブリッド構造という新しい技術ゆえに、施工・コスト・耐久性・維持管理など不確実性が残ります。投資家・テナントとしてはどのような施工監理・保証がなされるか確認が必要です。
  • 都心部で木造を使うことで、火災・耐久・メンテナンス・保険というリスクも考えられます。規制・法律・保険制度の対応がどうかを見ておく必要があります。
  • “環境性能”を付加価値にする時代ではありますが、それが必ずしもテナント賃料や投資回収速度に直結するかどうかは、マーケットの成熟度によります。過度に高められたコストを賃料に反映できるかは慎重に見なければなりません。

チャンス

  • 地方・郊外で「木造オフィス」「環境性能オフィス」「サーキュラー資源オフィス」を先取りしているプレーヤーは少数。都心での本格展開はモデルケースになるため、地方不動産でも縮小版・応用版の提案が可能です。
  • テナントのESG評価が高まる中、こうした建物は“借りたい”という企業が出てくる可能性があります。早期から関係を構築すれば優位なポジションに立てます。
  • 不動産業のみならず林業・木材加工・地域産資源活用といった“循環型ビジネスモデル”と連携した提案が可能となります。これは長年、山林売買にも詳しい私自身にとっても興味深い方向です。

私自身が地元・五井・千葉で考えること

千葉・市原・五井駅前という地域においても、今回のニュースは“遠い東京の話”ではなく、むしろ私の活動にも活かせるヒントが含まれています。

  • シェアキッチン「SOMARU」でも“木”を活かしたデザイン・居心地+地域資源(千葉の木材・地元産材)を導入すれば、付加価値を高められます。
  • 投資家向けセミナーでは「都心で木造+高環境性能オフィスが求められる時代」という文脈で、千葉・東京湾沿いの中小オフィス物件・倉庫物件のリノベーション提案もできます。
  • 山林の売買・活用を含めて、“木材を資産として捉える”という視点を広げられます。「木を育てて→使って→ストーリーを紡ぐ」モデルは、地域資源活用・SDGs対応として投資家にも響くテーマです。

まとめ:変革の兆しと私たちの選択

最後に、今回のニュースから私が感じる“時代の変化”と、“私たちがどう動くか”を整理します。

  • これは単なる建築ニュースではなく、「都市×木材×サステナビリティ×働き方」という複数の潮流が交差する“変革の合図”です。
  • 都心で本格的に木造オフィスが立ち上がることで、建築設計・不動産開発の価値基準が変わりつつあることを示しています。
  • 私たち不動産関係者、起業家、投資家としては、この変化を“機会”と捉え、「意味・価値・体験」を付加する提案へと進化すべきです。
  • 地方・中小市場でも“木材を活かした空間”“環境性能”“地域資源の循環”というキーワードは有効です。先行事例を見ながら自分のフィールドに落とし込むことが鍵です。
  • 心理的にも、「木に触れる」「自然を感じる」「環境に貢献している」という体験価値は、これからの働く人・暮らす人が重視する要素です。

出典:三井不動産株式会社 https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2025/1104/

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