宅建業の免許を受け取っても、それだけではまだ営業を開始できません。免許交付後にもう一つ、必ず通らなければならない関門があります。それが「保証金」の手続きです。
今回はこの保証金制度と、開業時に多くの方が悩む「保証協会選び」について、最新の情報を踏まえて改めて整理してみたいと思います。
営業開始までに必要な「保証金」の手続き
宅建業の免許を受けたあと、営業保証金等の供託・納付手続きを済ませ、その証明書類と免許のハガキ(免許番号取得後に届きます)を持参して免許証を受領することで、晴れて宅建業の営業活動をスタートできます。
この保証金の払い込みには、2つの方法があります。
※供託・納付の手続きは、免許日から3ヶ月以内に行う必要があります。期限内に手続きをしないと免許が取り消されることがあるので注意しましょう。
①法務局に営業保証金を供託する方法
- 本店:1,000万円
- 支店:1店舗につき500万円
供託は金銭のほか有価証券でも可能で、国債は額面100%、地方債やその他国交省が定めるものは額面80%で評価されます。
②保証協会に加入し、弁済業務保証金分担金を納付する方法
- 本店:60万円
- 支店:1店舗につき30万円
この金額は制度創設以来変わっておらず、現在も全国共通です。②を選べば、わずかな資金負担で開業できるのが最大のメリットです。ただし保証協会への加入には、この分担金とは別に入会金・年会費などの諸費用が発生します。
そもそもこの営業保証金制度は、宅建業者との取引で損失を被った相手方(宅建業者を除く)を保護するための消費者保護の仕組みです。あらかじめ保証金を用意しておくことで、万一のトラブル時に弁済できるようにしているわけです。
保証協会は全国に2つ、どちらか一方しか選べない
②の方法を選んだ場合、加入できる保証協会は次の2つです。1つの保証協会に加入した宅建業者は、もう一方の保証協会には加入できないため、開業時にどちらか一方を選ぶ必要があります。
- 全国宅地建物取引業保証協会(ハトマーク:通称「全宅」)
- 不動産保証協会(ウサギマーク:通称「全日」)
以前この記事を書いたときの情報から数年が経ち、会員数や費用体系にも変化がありましたので、最新の状況を踏まえて改めて比較してみます。
全宅(ハトマーク)
各都道府県の宅建協会と一体となって運営されており、全国の宅建業者のおよそ80%が加盟しているといわれる、業界最大のネットワークです。地域に根ざした支部活動が活発で、会員同士の結びつきが強いのも特徴です。
入会には、都道府県宅建協会の会員であることが条件となります。また2020年4月からは入会金の分割払い制度がスタートしており、20万円の入会金を「初年度10万円・翌年度5万円・翌々年度5万円」の3年分割で納めることも可能になっています。開業初期の資金負担を抑えたい方には嬉しい制度です。
全日(ウサギマーク)
全日本不動産協会とその母体となる不動産保証協会が運営しており、両協会合わせて全国で35,000社を超える会員をサポートしています。全国47都道府県に支部を持つ全国組織である点は全宅と同じで、消費者向けの無料相談会など、不動産保証協会ならではの消費者保護に特化した取り組みも行っています。
入会にあたっては全日本不動産協会と不動産保証協会の両方に同時加入する形になりますが、現在、本部によっては「全日本不動産協会・不動産保証協会・全国不動産協会・全日本不動産政治連盟」の関連4団体に同時加入すると入会費用が割引になるパッケージプランを実施しており、東京本部・大阪本部などでは適用期間が2027年3月31日まで延長されています。開業のタイミングによっては、こうしたキャンペーンを活用することで初期費用を抑えられる可能性があります。
費用面での比較
弁済業務保証金分担金(本店60万円・支店30万円)はどちらの協会も共通ですが、入会金・年会費などの諸費用は協会や都道府県、加入時期によって異なります。以前は「全日の方がやや安く、全宅の方がやや高め」という傾向がありましたが、現在はキャンペーン割引の有無によって前後関係が変わることも珍しくありません。
大切なのは、加入を検討している都道府県の窓口(宅建協会または全日本不動産協会の各本部)に、その時点での正確な入会金・年会費・その他諸費用を直接確認することです。地域差・時期差が大きい分野なので、ネット上の一般的な相場感だけで判断するのはおすすめしません。
どちらを選ぶべきか
会員数・ネットワークの広さを重視するなら、シェア約80%を誇る全宅(ハトマーク)に軍配が上がります。一方で、費用面のキャンペーンや不動産保証協会ならではのサポート体制に魅力を感じる方は、全日(ウサギマーク)を選ぶケースもあります。
どちらの団体も研修制度やトラブル対応のサポート体制を備えている点は共通していますので、最終的には「取引先や周囲の同業者がどちらに加入しているか」「地域内でのつながりをどう築きたいか」といった観点から、ご自身に合う方を選ぶのが良いと思います。
ちなみに全国の宅建業者数は増加を続けており、直近の国土交通省の調査では13万2千業者を超え、11年連続の増加となっています。開業を目指す方が年々増えている業界だからこそ、こうした協会選びも含めて、開業準備は一つひとつ丁寧に進めていただきたいところです。
当社も開業にあたり、役所の担当者からのご紹介がきっかけで全宅(ハトマーク)に加入した経緯があります。実際に加入手続きを経験した立場として、これから開業される方の参考に少しでもなれば幸いです。

