不動産業界の雄・オープンハウスグループが、内定者研修として「稲刈り体験」を行いました。
舞台は群馬県太田市。JA太田市と地元農家の協力のもと、30名の内定者たちが鎌を手に、約300㎡の田んぼで汗を流しました。
一見すると、「不動産会社が農業?」と意外に思われるかもしれません。ですが、私はこの取り組みを、“令和型の企業文化づくり”の象徴として非常に興味深く見ています。私の古巣であるリストグループも北海道ニセコで農業法人「リストファーム」を立ち上げ、地元農家と協力して作物の栽培をスタートしており、ふるさと納税の返礼品として活用や、将来的な飲食事業への視野もいれています。
「土に触れる」ことが育む、リーダーの根っこ
現代の企業では、デジタル化やリモートワークが進む一方で、「リアルな体験」や「身体知」が失われつつあると感じます。
そんな中で、オープンハウスが若者たちに田んぼでの稲刈りを体験させたことには、深い意味があります。
農作業は、自然と対話しながら行う仕事です。
思い通りにならない天候、泥まみれの不便さ、そして協力しないと進まない共同作業。
こうした経験を通して、内定者たちは単なる「チームワーク」ではなく、“人と自然と時間のリズムに寄り添う感覚”を学んでいきます。
この感覚こそ、のちにリーダーとなる人材が持つべき根っこではないでしょうか。
「やる気の源米」というネーミングに見える哲学
収穫したお米は、「やる気の源米(げんまい)」と名付けられ、就活生にプレゼントされるという。
単なるノベルティではなく、「努力の結晶を次世代に渡す」というストーリーデザインがここにあります。
企業は「何を作るか」よりも、「どんな想いで届けるか」が問われる時代になりました。
この“米(マイ)ファーム”は、モノではなく「経験」を共有し、「想い」を循環させるブランドづくりの実践例と言えます。
「数字の成長」と「文化の成長」の両輪経営へ
オープンハウスは、2024年に売上高1兆2,958億円を突破し、不動産業界日本一を目指す企業です。
数字だけを見れば、極めて強い“成果志向”の会社。
しかし、その一方でこのような「人間的な研修」を行っていることに、私は大きな希望を感じます。
企業が真に持続可能な成長を遂げるためには、数字の成長と文化の成長の両輪が必要です。
社員一人ひとりの“感性”を育てることが、結果的に長期的なブランド価値を高めている。
オープンハウスのこの取り組みは、まさにそのバランスを模索する実践だといえます。

地方と企業が手を取り合う「共育」のかたち
また注目したいのは、地方との共創。
太田市とJA太田市が全面協力し、地元農家と都会の若者が一緒に汗を流しました。
これは、単なるCSR(社会貢献活動)ではなく、「人と地域がともに育つ=共育(きょういく)」のモデル。
地方の高齢化や後継者不足は深刻な課題だが、こうした企業との連携によって、地域農業が再び注目されるきっかけにもなりそうです。
“街の元気を作る”というオープンハウスのビジョンが、言葉だけでなく行動として現れています。
「稲を刈る」ことは、「過去を受け継ぐこと」
稲刈りとは、先人たちが守ってきた自然と技の集大成を“受け取る”行為でもあります。
田植えから収穫までの一連の流れを体験することで、内定者たちは「自分がどこから何を受け継ぎ、何を未来へ渡すのか」を考える機会を得たはずです。
これは、企業人としてのマインドセットに直結します。
仕事とは、利益を生む行為であると同時に、社会の連鎖をつなぐ行為。
「稲刈り研修」に見えた、次の時代の人材育成像
多くの企業が「人材育成」や「エンゲージメント向上」を掲げるが、実際に“心を動かす体験”を設計できている企業は少ない。
オープンハウスのこの研修は、まさに“体験が理念を育てる”好例です。
採用や教育の場が、単なるスキル習得の場ではなく、人間としての深さを取り戻す場へと変わりつつあります。
この動きは、これからの企業経営にとって非常に大きなヒントになります。
おわりに──「心を耕す経営」へ
「稲を刈る」という行為には、自然と向き合い、自分と向き合い、人と向き合う時間があります。
オープンハウスの“米(マイ)ファーム”研修は、単なる話題づくりではなく、“心を耕す経営”の実践だったのだと思います。
経営とは、畑づくりに似ている。
土を整え、種をまき、時に台風をやり過ごしながら、実りを待つ。
そしてその実りを、また次の世代へと渡していく。
そんな「循環する経営のかたち」を、このニュースから感じ取りました。

出店:株式会社オープンハウスグループ https://openhouse-group.co.jp/news/release/page/1/?news_tab https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000822.000024241.html

