2025年10月2日付で大きなニュースとなった「みんなで大家さん」の配当遅延問題。
成田空港周辺の開発をうたったシリーズを中心に、全国で27商品にまで広がった遅配。すでに1,000人以上の投資家が弁護士に相談しているという報道は、多くの投資家やこれから不動産投資を検討している人々に強い衝撃を与えました。
この記事では、このニュースを単なる「事件」として消費するのではなく、なぜこうした事態が起きるのか、そして私たちはどう学び、どう備えるべきなのかを整理していきます。
「みんなで大家さん」とは何か?
「みんなで大家さん」は、不動産特定共同事業法に基づく投資商品です。
投資家は直接不動産を所有するわけではなく、事業者が組成した商品に出資し、その収益を配当として受け取る仕組みです。
ポイントは以下の通りです:
- 年7%などの「高利回り」をうたう
- 不動産開発プロジェクトへの共同出資
- 元本保証はない
- 事業者の運営状況に大きく依存
つまり、不動産投資といっても「アパート経営」や「区分マンション投資」とは異なり、投資家は事業者に資金を預け、その成果を信じて待つしかない構造なのです。
なぜ配当遅延が起きたのか?
報道によれば、成田空港周辺の大規模開発は当初の工期から3度延期されており、事業の進捗が遅れています。
さらに、訴訟や解約請求が相次ぎ、資金繰りが圧迫されることで、他の商品にも遅配が波及しているようです。
これは、不動産投資に限らず「資金調達型ビジネス」の典型的なリスクです。
- 資金を集める
- プロジェクトを進める
- 想定どおりに収益が出れば分配できる
しかし、一度計画が遅れると「資金はあるが事業が進まない」「返金要求に対応できない」といった悪循環に陥ります。
特に、利回り7%という数字は、低金利時代の日本においては魅力的に映る一方で、それを安定的に出すのは相当難しいといえるでしょう。
投資家心理と「高利回り」の魔力
心理学の視点から見ると、人は「他よりも高いリターン」を提示されると、冷静なリスク判断を一時的に忘れてしまいがちです。
特に、不動産という「堅そうな資産」に紐づけられると、「安全に高利回りが得られる」と錯覚しやすいのです。
しかし実際には、利回りが高いほどリスクも高いのが投資の鉄則。
「利回り7%」の裏側には、計画が想定どおり進まなければ元本すら危ういという現実が隠れています。
今回の教訓:投資で確認すべき3つの視点
今回の「みんなで大家さん」問題は、多くの人にとって「反面教師」となる出来事です。これから投資を検討する際に、最低限以下の3点を確認する習慣を持つことが大切です。
① 事業者の信用力
投資先の不動産ではなく、運営する会社の健全性を調べる必要があります。
資本金、決算状況、過去のトラブル歴などは、公開情報である程度確認可能です。
② 投資スキームの理解
「元本保証はあるのか」「資金はどう運用されるのか」「出口戦略はどう描かれているのか」。
これらが明確でない投資は、たとえ大手が関わっていても慎重に判断すべきです。
③ リスク分散
資産を一点に集中させず、分散投資を心がけることが重要です。
今回のニュースで紹介された女性のように「預金や不動産売却益をすべて投じる」のは最も避けるべき行動です。
これからの資産防衛術
今回のケースは不動産投資商品ですが、本質的には「情報の非対称性」が問題の根底にあります。
つまり、事業者は全てを把握していても、投資家は断片的な情報しか得られず、判断を誤るという構図です。
これからの時代に必要なのは、
- 情報を鵜呑みにしないリテラシー
- 投資を「勉強代」として小口から始める習慣
- 長期的に安定する投資(インデックス投資、不動産現物投資、事業投資など)との組み合わせ
資産防衛のカギは「冷静な多角化」と「健全な疑問を持つこと」です。
まとめ
「みんなで大家さん」の配当遅延問題は、多くの投資家にとって痛ましい出来事ですが、同時に社会全体にとって大きな学びを与えてくれています。
投資は「夢」を描くものではなく、「リスクとリターンを冷静に天秤にかける行為」であるという原則を、改めて私たちに教えてくれました。
今後の資産形成において、私たち一人ひとりが情報に流されず、自ら考える姿勢を持つこと。
これが、不確実な時代を生き抜くための最大の資産防衛術なのだと思います。

出店:読売新聞 https://www.yomiuri.co.jp/national/20251001-OYT1T50183/