2025年上期「首都圏中古戸建価格の動向」二極化

2025年上期「首都圏中古戸建価格の動向」を読む

不動産情報サービス大手アットホーム社が、2025年上期(1月~6月)の首都圏中古戸建の価格動向を発表しました。首都圏全体の平均価格は2,999万円で前期比横ばい。しかし前年同期比ではマイナス2.6%と下落しています。
一方で、東京23区、横浜・川崎、さいたま市、千葉県西部といった「中心4エリア」は、2017年以降で最高額を更新しました。つまり全体感では下落傾向を示しつつも、都市部では依然として上昇基調が続いているという「二極化」が鮮明になっています。


目次

首都圏全体は横ばい、しかし東京23区は+5%の上昇

数字を細かく見ると、その「二極化」がはっきり浮かび上がります。

  • 東京23区:6,280万円(前期比+5.0%)
  • 東京都下:3,500万円(同+0.3%)
  • さいたま市:3,480万円(同+3.0%)
  • 横浜・川崎:4,280万円(横ばい)
  • 千葉県西部:2,980万円(横ばい)
  • 千葉県その他:1,680万円(横ばい)

特に東京23区は突出した伸びを示しました。これは「中古戸建」とはいえ、土地価格が大きく影響するためです。戸建住宅はマンションよりも建物の価値減耗が早い一方、土地部分の価値は長期にわたり維持されます。ゆえに、地価の上昇がそのまま価格に反映されやすいのです。


東京23区の価格幅の広がり

興味深いのは、東京23区内での価格差です。

  • 千代田区:1㎡あたり328.3万円
  • 葛飾区:1㎡あたり36.8万円

両者の差は実に291.5万円。これは「同じ23区内」でありながら、土地の価値にこれほどの差が存在していることを示します。中古戸建の価格帯が大きく広がっているのも当然です。

また、東京23区では3階建ての戸建てが4割を超えている点も特徴です。狭小地でも建物を縦に積み上げることで居住空間を確保しようとする設計。これは地価の高さと直結した都市型の住まいのかたちです。


なぜ「中心4エリア」だけ強いのか

東京23区、横浜・川崎、さいたま市、千葉西部は、なぜ2017年以来の最高額を更新しているのでしょうか。私は以下の要因があると考えます。

  1. 交通利便性の高さ
    首都圏の中心部にアクセスしやすい地域は、依然として根強い需要があります。テレワークが定着したとはいえ、企業や教育機関、文化施設の集中は変わらず、通勤通学の利便性を求める層が一定数存在します。
  2. 人口動態の集中
    日本全体では人口減少が進んでいますが、首都圏、とりわけ都市近郊には依然として人が集まっています。少子化の影響を受けつつも、世帯数ベースでの需要はまだ底堅いのです。
  3. インフラ・生活利便性
    医療・教育・商業施設が充実している地域は、資産価値が維持されやすい。住みやすさの「総合力」が価格を支えています。

郊外・地方エリアとの対比

一方で、首都圏郊外や地方都市の中古戸建は「横ばい〜下落」の傾向が強まっています。人口減少に直面するエリアでは、需要そのものが伸び悩みます。

例えば千葉県西部(市川・浦安・船橋など)は横ばいを保っていますが、千葉県その他のエリア(館山・銚子など)では価格は1,680万円にとどまり、伸び悩みが鮮明です。今後はエリア間格差がさらに拡大する可能性があります。


消費者にとっての「読み解き方」

今回のデータから、私たちが学べることは何でしょうか。

  1. 「平均値」だけで判断しない
    首都圏平均は2,999万円で横ばい。しかしその中身は、23区の6,280万円から千葉県郊外の1,680万円まで幅広い。つまり「平均」では実感に合わないのです。
  2. エリア特性を理解する
    不動産は「一点もの」の商品です。需要が集中するエリアは、下落局面でも資産価値を維持しやすい。一方で、人口減少や交通不便な地域では価格維持が難しい。
  3. ライフスタイルとのマッチング
    価格の上下に一喜一憂するよりも、自分や家族のライフスタイルに合った場所を選ぶことが大切です。通勤時間、子育て環境、老後の生活利便性など、数字では測れない価値をどう見つけるかが重要になります。

投資家の視点から

投資として中古戸建を検討する場合も、今回のデータは示唆的です。

  • 東京23区のような高値圏でも需要が旺盛な地域は、長期的に安定した資産運用が期待できます。
  • 一方、郊外エリアは価格が低いため取得コストは抑えられますが、将来的な流動性(売却しやすさ)が課題です。
    つまり「資産の保全を優先するのか」「収益性を優先するのか」でエリア選びが変わります。

今後の展望

2025年上期の動向を踏まえると、今後のシナリオは大きく二つです。

  • 都市部の価格は維持・微増
    インフラや人口集中が続く限り、都市近郊の需要は下支えされる。
  • 郊外・地方は二極化進行
    駅近・利便性の高いエリアは底堅いが、そうでない地域では下落が続く。

この「二極化」を理解しておくことが、今後の不動産購入・投資の判断において欠かせないでしょう。


まとめ

今回の調査は「平均価格は横ばい」という一見平穏な数字に隠れた、首都圏の中古戸建市場の実像を浮かび上がらせました。
それは「都市部はなお堅調」「郊外は横ばい〜下落」という二極化の構図です。

不動産は経済の縮図です。人口動態、地価、インフラ、ライフスタイル――すべてが価格に反映されます。
数字の背後にある背景を読み解くことが、未来の選択を間違えないための第一歩。
これからも「数字の向こう側」を一緒に考えていきたいと思います。

出典:アットホーム株式会社 https://athome-inc.jp/news/data/market/chuuko-kodate-kakaku-2025-firsthalf/

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