空き家問題――この言葉を耳にする機会は、年々増えています。総務省の「住宅・土地統計調査」によると、日本の空き家数は2023年時点で約900万戸、空き家率は過去最高の13.8%を記録しました。少子高齢化、人口減少、都市部への人口集中…。これらの要因が絡み合い、日本中で使われない家が増え続けています。
そんな中で、(株)ジェクトワンが発表した「AIを活用した空き家流通プラットフォーム『空き家のコタエ』」は、非常にタイムリーで注目すべきサービスだと感じました。この記事では、このニュースを単なる「新サービスの紹介」に留めず、
・なぜ今、AI×空き家マッチングなのか?
・この仕組みがもたらすインパクトは何か?
・そして、不動産業界や地域社会はどう変わるのか?
この3つの視点から掘り下げていきます。
なぜ今、AI×空き家マッチングなのか?
空き家所有者の心理を考えると、「どうしたらいいのかわからない」という漠然とした不安が一番大きいはずです。
「売るべき?貸すべき?それとも壊した方がいい?」
多くの人は不動産に関する専門知識がなく、結果として放置してしまう。これが現実です。
そこで「空き家のコタエ」は、AIを使ってこの不安に答えます。
・売却査定
・除却(解体)査定
・リノベ後の賃料や利回りの試算
これらを一括で提示することで、「今の空き家がどんな可能性を持っているのか」を、所有者が客観的に理解できるようになる。これは画期的です。
従来の不動産業界では、人間の経験や勘に頼る部分が大きく、所有者にとって「セカンドオピニオン」を得るのも難しかった。しかしAIは、膨大なデータをもとに中立的な提案をしてくれる。ここに大きな価値があります。
買い手側にも大きなメリット
一方、購入希望者にとっても「空き家のコタエ」は魅力的です。
空き家を買う最大の不安は、「買った後どうするのか?」ということ。
・どのくらいの改修費がかかるのか?
・リノベした後、どれくらいの賃料で貸せるのか?
・利回りはどれくらい?
これを明確にする情報が、今までほとんどありませんでした。しかし、このサービスはAIでシミュレーションし、「リノベ後の想定利回り」まで見せてくれる。これは投資家にとって大きな安心材料になります。
個人的には、この仕組みが「不動産投資の裾野を広げる」可能性を感じています。
これまで、空き家投資は「目利きができる一部の人」しか参入できませんでした。情報の非対称性が大きかったからです。しかし、AIによる客観的な試算が提示されることで、初心者でも「判断材料を持って投資」できるようになる。この変化は、地方の空き家再生や移住促進にとっても大きな追い風になるでしょう。
不動産業界のビジネスモデルを変える可能性
このサービスの本質は、単なるマッチングプラットフォームではありません。
「空き家の価値を最大化するための意思決定をサポートする仕組み」
ここがポイントです。
ジェクトワンは、最初は東京・神奈川・埼玉・千葉で展開し、その後エリアを広げるとしていますが、地方こそこの仕組みが必要です。空き家問題が深刻なのは、むしろ地方だからです。
そして将来的には、査定からリノベ、解体、仲介業者探しまで一気通貫でできるようにする計画。これが実現すれば、不動産業界にとっては「プラットフォームを軸とした新しいエコシステム」が生まれます。
ここで想像してほしいのは、Amazonが小売を変えたように、このサービスが不動産の価値流通を変えるかもしれないということです。
AIに任せきりでいいのか?
ここで一つ、哲学的な問いを投げかけたいと思います。
「AIにすべてを委ねてしまっていいのか?」
AIは合理的な判断をしてくれますが、人間の感情や地域コミュニティとの関係性までは考慮できません。
空き家は単なる資産ではなく、持ち主の思い出や、その土地の歴史を背負った存在です。だからこそ、AIの提案をどう使うかは、最終的に人間の倫理観や価値観に委ねられるべきです。
この点で重要なのは、「AIが意思決定の補助をする」立ち位置に留まること。決してAIに完全な判断を丸投げするのではなく、人間が最後の一手を打つ。これが健全な使い方だと思います。
空き家は「問題」から「資源」へ
私は、不動産業者として、空き家を「日本の新しい資産」として見ています。
これまで「社会問題」とされてきた空き家ですが、見方を変えれば、そこには大きなチャンスがあります。
リノベーションによって新しい価値を生み、地域の活性化につなげる。
テレワーク時代、地方移住ニーズの高まりとともに、空き家は「負動産」から「富動産」へと変わる可能性を秘めています。
ジェクトワンの「空き家のコタエ」は、その変化を後押しするサービスになるでしょう。
2026年のローンチ、今から非常に楽しみです。
あなたはどう思いますか?
空き家を持っている方、空き家投資に興味がある方、このサービスに期待していますか?
結論:AIは不動産業界に革命を起こす。ただし、最後に決めるのは人間だ。
空き家を「負動産」から「資源」へ変えるチャンスは、すでに目の前にあります。
出典:不動産流通研究所 :https://www.re-port.net/article/news/0000079741/