不動産情報サービスのLIFULL(ライフル)が発表した最新の調査によると、住宅ローンの返済負担が「世帯月収の3割以上」という人が21.7%に達したそうです。半年前の調査から3.6ポイント増加という数字は、決して小さくありません。
さらに、「ローンの返済が不安」という人は24.7%と、こちらも増加傾向。背景には、住宅価格の高騰と、金利上昇という二重のプレッシャーがあります。都内の新築マンションの平均価格は、ついに1億円超え。低金利時代を前提にした借り入れが、今、静かに重くのしかかっているのです。
今日は、このニュースを「数字」だけでなく、「心理」と「今後の行動戦略」という視点で解説していきます。
3割の壁はどこから来たのか?
住宅ローンの返済負担が「月収の3割以内」という目安は、昔から存在しています。これは金融機関が融資を判断する際の返済負担率(Debt-to-Income Ratio)に基づいています。
なぜ3割なのか?
人間の生活費には、住居費以外にも固定的にかかる支出があります。教育費、保険料、通信費、食費…。これらを考えると、手取りの3割以上をローンに充てると、可処分所得が圧迫され、家計に余裕がなくなる、というのが理由です。
しかし、現実を見ると「3割以上」という世帯が2割を超えている。しかも、「もっと借入額を減らせばよかった」と後悔する人が39.1%(3割以上負担の世帯)というのは、非常に示唆的です。
人はなぜ借りすぎてしまうのか?
ここで心理学の視点を入れましょう。人が住宅を購入する際、冷静な計算よりも強く働くのは感情です。
- 「今買わないともっと高くなる」という恐怖(FOMO:Fear of Missing Out)
- 「一生に一度の買い物」という特別感
- 「金利が低いうちに」という安心感
これらが組み合わさると、判断が緩くなり、「少し背伸びすればいける」という思考に陥ります。
ここにさらに、近年の超低金利時代が加わったことで、「返済額が安いから、もう少し高い物件を」という意思決定が広がりました。
しかし、金利が上がれば話は別。変動金利を選んだ人は特に、返済額の上昇リスクを肌で感じ始めています。
金利上昇で「固定派」シフトは健全か?
調査によると、変動金利を選んだ人は64.1%と依然として多いですが、固定金利型を選ぶ割合は増加傾向にあります。これは、今後の金利上昇を見越した合理的な動きです。
ただ、ここで重要なのは、「固定にすれば安心」ではないということ。固定金利は、変動金利よりも金利が高めに設定されるため、初期の返済負担はむしろ増えます。
本当に安心を得たいなら、借入額を抑える、繰り上げ返済を計画する、投資と貯蓄をバランスよく行う、この3点が不可欠です。
39.3%の人が「特に対策なし」という現実
驚くべきは、金利上昇リスクに対し、39.3%の人が「特に対策をしていない」というデータです。
一方で、対策をしている人の中では、
- 新NISA・iDeCoでの資産形成(33.8%)
- 預貯金(30.1%)
- 繰り上げ返済(16.1%)
が多いという結果でした。
ここでも心理が見えます。人は、「将来の不確実なリスク」よりも、「今の生活の快適さ」を優先する傾向があります。これは時間選好バイアスと呼ばれるもの。将来より今を重視する傾向は、人間の本能とも言えます。
今、私たちが取るべきアクション
では、この状況で何をすべきでしょうか?
僕は3つのポイントを提案します。
① 借入額の再点検をする
特に変動金利の方は、金利上昇局面を考慮したシミュレーションを必ず実施してください。「今の返済額」ではなく、「1%上がったとき」「2%上がったとき」を想定することが大切です。
② 金利上昇に備えたキャッシュフロー戦略を立てる
繰り上げ返済も一つの方法ですが、流動性を確保することも重要です。預貯金と投資のバランスを考えましょう。特にiDeCoや新NISAを活用して、長期的な資産形成を同時に進めるのが賢明です。
③「今が買い時」思考から脱却する
住宅は資産ですが、同時にライフスタイルを支える「負債」でもあります。市場の熱に飲まれず、「本当に必要な家か」「返済に余裕があるか」を自分に問いかけてください。
中長期的な住宅市場の見通し
最後に、住宅市場全体の話をしましょう。金利上昇と固定金利志向が強まると、借り入れ可能額が減り、購買力が下がるため、中長期的には価格上昇が鈍化する可能性があります。
ただし、都心の一等地や資産性の高いエリアは別。むしろ、こうした局面で二極化が進むと考えています。
まとめ:不安を「知恵」に変える時代
ニュースを読むと、不安になる方も多いでしょう。でも、不安は「知識と行動」で武器にできます。
金利は私たちがコントロールできません。しかし、借入額の調整、資産形成、ライフプランの再設計は、私たち自身ができることです。
「買った瞬間にゴール」ではなく、「買った後の20年、30年をどう生きるか」をデザインすること。それが、これからの住宅購入の新常識になるでしょう。
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