築40年超「億ション」

築40年超でも「億ション」 東京23区の中古マンション価格に思うこと

「東京23区で流通する中古マンションのうち、7戸に1戸が1億円を超えている」――そんな調査結果が公表されました。しかも中には築40年を超えた物件でも億単位で売りに出されているというのです。

このニュースは、不動産業界に携わる私としても非常に示唆的でした。価格が上がっているのは新築だけではなく、中古市場にも波及している。それも「資産性がある立地」に限っては、築年数を超えて評価される現象が起きている。これは不動産の本質を映し出す出来事といえるでしょう。実は弊社が取り扱うハワイの不動産も築年数が40年、50年を経過していても億ションどころではなく、それ以上の価値をもつコンドミニアムが多く点在しています。アメリカではロケーション、ロケーション、ロケーションと、築年数より立地条件が不動産の価値を決めます。日本も築年数より場所が評価されるようになるのか、気になるニュースです。


「モノ」から「場所」へ――評価軸の変化

マンションは本来、時間の経過とともに建物の価値が下がっていくとされます。耐用年数を過ぎれば修繕費がかさみ、建て替えのリスクもある。それでもなお「築40年超で1億円」というのは、建物そのものではなく「場所」への評価が中心になっている証拠です。

都心の一等地は、日本の人口減少が進んでもなお世界の投資マネーが流れ込むエリアです。港区・千代田区で半数以上が億ションというデータは、その土地に「世界基準の資産価値」が付与されていることを意味します。


グローバルマネーが動かす価格の波

この背景には、円安も無視できません。円が安くなると、海外の投資家から見ると「東京の不動産は割安」になります。たとえば1ドル=150円であれば、同じ1億円の物件が、為替換算で70万ドル程度に収まります。ニューヨークやロンドンの水準と比べれば、依然として東京は「買いやすい都市」なのです。

さらに、資材価格の高騰や人件費の上昇も新築価格を押し上げています。その結果、「新築は高すぎるから中古へ」という動きが出て、中古市場の価格を底上げしています。


「住まい」から「投資」へ――価値観の二極化

興味深いのは、購入者の動機が二極化していることです。

  • 生活のために買う人
     家族の暮らしや通勤の利便性を優先し、無理をしてでも都心のマンションを購入する。
  • 投資のために買う人
     住むことは二の次で、「資産を持つ」ことを重視し、立地が良ければ築年数は気にしない。

この二つの流れが混ざり合うことで、「築40年でも億ション」という現象が生まれているのです。


「足立区ゼロ」が示すこと

一方で、足立区では1億円を超える中古マンションはゼロというデータも出ています。これは決してネガティブな話ではありません。むしろ東京23区の中で「手が届く現実的な価格帯」が残されているともいえます。

私が現場で感じるのは、都心の価格上昇が地方や郊外に住む人々のライフスタイルを見直すきっかけになっているということです。テレワークや二拠点生活の広がりで「必ずしも都心に住む必要はない」と考える人が増えています。その結果、価格帯の違うエリアごとに住まいの選択肢が多様化している。


不動産の「時間軸」をどう見るか

築40年でも評価される物件と、そうでない物件。その差は「立地」と「管理」に集約されます。
特に管理状況は大切です。修繕積立金が適正に積まれているか、共用部分がきちんと維持されているか。築年数が古くても、きちんと管理されたマンションは買い手からの信頼を得られます。

また、不動産を考える際には「時間軸」が欠かせません。

  • 5年後、売れるか
  • 20年後、建て替えられるか
  • 30年後、相続する価値があるか

こうした問いを持ちながら物件を見ると、「築40年の億ション」が単なるニュースではなく、将来を考えるヒントになります。


読者への問いかけ

このニュースをどう受け止めるかは、人それぞれです。

  • 「自分には縁がない世界だ」と距離を置くのも一つ。
  • 「資産として不動産を持ちたい」とチャンスを見るのも一つ。
  • 「都心の高騰を横目に、郊外でのびのび暮らしたい」と考えるのも一つ。

大切なのは、社会全体で起きている変化を「自分の人生にどう取り入れるか」を考えることです。


まとめ

築40年超でも1億円という価格は、単なるバブル的な現象ではありません。そこには「グローバルマネー」「円安」「資材高騰」「都市の魅力」といった要素が複雑に絡み合っています。そして、その影響は一部の富裕層だけでなく、これから家を探す多くの人の選択にも波及していきます。

私は、このニュースを「東京は世界とつながっている都市である」ことを改めて実感させる出来事として捉えています。だからこそ、不動産を考えるときは「モノとしての家」だけでなく「資産としての時間軸」を意識することが大切です。

読者の皆さんには、ぜひ自分のライフスタイルに合った選択をしながら、この変化の時代を楽しんでいただきたいと思います。

出典:読売新聞 https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250819-OYT1T50166/

築40年超でも「億ション」 東京23区の中古マンション価格に思うこと

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